Pocket Garden ~今日の一冊~

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退屈してる中高生に

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スキャット』(2010年)カール・ハイアセン著 千葉茂樹訳 理論社

今日の一冊は、一気読みのコチラ!

こちらは翻訳者の金原瑞人さんが発行しているフリーペーパーBOOKMARKの“分厚い本特集”に掲載されていたものです。

 

そこにね、翻訳者の千葉茂樹さんご自身も読者になりきって一気読みとあって、こんなに面白いのにオトナの事情で重版予定なし、在庫も極希少、とあつたので、速攻お迎えしたというわけです。千葉茂樹さんがいうなら、間違いナイ。退屈している中高生にぜひ差し出したい一冊。

 

スキャット』あらすじ

ミセス・スターチ、学園内でもっとも恐れられている生物の先生が、ブラックヴァイン湿地での校外学習以降、姿を消してしまった。学園長からは、先生が家族の事情により、当分の間授業を休むことになったと説明があるが、ニックとマータはどうにも釈然としない。二人はクラスの問題児ドゥエーンがスターチ先生の失踪に、なにか関係しているのではと疑っていたのだが……。事態は二人の想像をはるかに超えて意外な展開に。謎の自然保護活動家、歌う代用教師、悪徳石油業者…、フロリダの雄大な自然を舞台に、絶滅の危機に瀕する野生のパンサーと強烈に個性的な大人たちの中で、ニックとマータの冒険がはじまる。

 

分厚い本とのことでしたが、なんのなんの。面白くて分厚さは全然感じなかったです!

いやあ、面白い。ミステリー要素もちょっとありつつ、ちょっと漫画チックな面白さとでもいいますか。一人ひとりのキャラがたってるんですよね。通常は善悪二元論になってる物語はあまり好きではないのですが、この物語の場合はその分かりやすい対立が爽快でした!登場人物も、まあ、エキセントリックなこと(だから、漫画チック)。こんな教師いないよね、とかこんなおバカな経営者いないよね、とか笑っちゃう。

 

個人的に一番興味深かったのは、友だちでもなんでもなかった問題児ドゥエーンを、一瞬でニックが信じるところ。噂じゃない、彼の目を見て信じるところ。ああ、いいなあ、って。

 

また、感心したのは、海外の絶滅危惧種に対する意識の高さ!『ミサゴのくる谷』を読んだときも思いましたが、日本の子どもたちはどれだけ知ってるのかしら......と思っちゃう。↓

blog.goo.ne.jp

 

YA(ヤングアダルト)小説にありがちな、学校内の人間関係だけに終わらないところもいいです。絶滅危惧種って、やっぱりロマンがある。人間だけが世界じゃないっていい!!!

 

エンターテイメント的な面白さがありつつも、父子の愛情や自然保護活動についても考えさせられる良い物語でした!