Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

要注意!:大人になっても言ってはいけないこと

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『ノーム 不思議な小人たち』(2017年)ヴィル・ヒュイゲン文 リーン・ポールトフリート絵 遠藤周作・山崎陽子・寺地伍一共訳

 

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今日は自分の失敗から、要注意なことを書きますね。

このブログは基本大人しか読んでいないと思いますが、もし学生さんで読んでいる人がいたら、ここから先は読まないでくださいね。

 

今日の一冊は、こちらのブログでも何回か紹介しているこちら!

 

ノームと呼ばれる小人の生態がつぶさに描かれています。

オールカラーで、とにかくワクワクするんです。自然と共にある暮らし。

 

もうもう楽しくて、小学生の頃から何度読み返したことか。

うちにあるのは、まだサンリオ出版だったころの大型版ハードカバーで、当時で4,800円だったから結構しますよね。いまは、サイズもやや小さくなり、ソフトカバーになって、お値段もお手頃の1,980円。個人的にはこの内容は、ハードカバーに合ってるとは思うのですが、多くの人の手に渡ることを思えば新装版になるのかな。

 

どれだけ好きだったかというと、うちの玄関ニッチにいまでもレリーフ飾ってるくらい↓

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実家から持ってきた(笑)

 

 

で、本題なのですが、先日、知人とどの本が好きかという話になったんですね。

そしたら、『ノーム』というではありませんか。

まさかの!特に児童文学好きな人でもないと思っていたし、大人の口から出ることはめったにないので、もう嬉しくて。大興奮。

 

しかし、あのあとがきは、ないよねー、って話したんです。

だから、私は人に勧めるときは子どもにはあとがきは見せないようにするか切り取っちゃって、と言ってると。

 

そうしたら、彼女はあとがきは全く記憶に残ってなかったらしく、泣き出してしまったんです。いまのいままで、この瞬間まで本当にいるって信じてたのに、って。

 

び、びっくり。

 

ああ、なんてことを私はしてしまったんだろう。

でも、同時に何か通じるものがあって、嬉しかった。大人なのにこんなことで泣くなんて恥ずかしい、としきりに彼女は言ってましたが、恥ずかしくなんてない!

 

そんなわけで、このブログを書くことで、第二の彼女を生み出してしまうかもとも懸念しました。でもね、私が言わなくてもあとがきにしっかり書いてあるんですよ。

 

「この本のすべてが、全くの冗談で、うそばかりだったということを」

 

って。それでも、自分は信じつづけると訳者の山崎さんは書いていらっしゃいますが、それ大人には通用するかもですが、子ども時代の私がどれだけあの箇所をうらんだことか。あのあとがきをなくしてほしい、といまでも思っている。だって、可能性を消してしまうから。あえて、ブログに書いてるのは可能性消してしまう人が増えてほしくないからなんです。(伝わりますように!)

 

で、そのあと彼女が「サンタクロースだって、私いまもいると思ってる!」と言ったんですね。

ええ、そうなんです。

不思議なんですけど、私もいまでもいると思ってるんです。事実と真実は違う。

うちの親は、娘の私が親になってからも、時効だから……といって「あの時はねー」なんて絶対に言わないでいてくれたんです。だから、私の中での可能性は消えない。

 

でも、これ「実はね」と言っちゃったらおしまいなんです。

中学生の男の子だって、親から聞かされたとたん、大号泣したという話を聞きました。「知ってるけど、言ってほしくなかった」って。

 

話を戻しますと、そんな彼女をなぐさめながらね、ふと気づいたんです。

なぜ、原書の作者があとがきにわざわざそんなことを書いたのかということを。

 

こちらの、ノーム、あまりにもリアリティがあるんですね。1年に1度しか現れないサンタクロースと違って、ノームは人によっては身近に住んでいるかもしれない。必死に探し出すいたずらっこや、きっとこれをビジネスにしようとする大人が動き出すと懸念したのではないでしょうか。

だから、“あえて”うそばかりと書いた。そうに違いない!!!
彼女も納得してくれました。

ノームはいる。一周回って可能性はあるという結論。

 

可能性を消すようなことだけは、大人になっても言ってはいけない、そう改めて思った事件でした。