Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

本を介した人間関係って楽しい!

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『図書室のキリギリス』(2013年)竹内真作 双葉社

今日の一冊は、松林堂さんから連れ帰ったコチラ!

いやあ、松林堂さん、書店時代よりも本の数は少ないのですが、面出し(表紙が見えるように置いてある)が多いためか、どの本からも“私、面白いよ!どう?”と問いかけられているような気がして、毎回出合いが楽しみなのです。ちなみに前回ご紹介した『みかづき』も松林堂さんから。町の書店からブック居酒屋に生まれ変わった松林さんはコチラ↓

jidobungaku.hatenablog.com

 

さて、今回の物語は高校の学校司書さんのお話。

ああ、私もなりたかったなあ学校司書(書類で落とされてます)。

そんなこともあり、余計に、最初主人公の詩織が興味もないのに学校司書になったことが面白くありませんでした。どうして、熱意のある人が落とされて、興味のない人が受かるのよー!って。まあ、それは読み進めるうちに、あら詩織いいじゃない(←上から目線)に変わっていくのですが。

 

そもそも私が学校司書に憧れを持ったのは、こちらの本を読んで↓

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『自分を育てる読書のために』(2011年)脇明子・小幡章子共著 岩波書店

 

こちらは物語ではなく、中学の学校司書だった小幡さんの実録なのですが、もうね読んで泣きましたもん。ああ、こんなにも本を手渡すのって素敵な仕事なんだ、って。熱い思いがこみあげてきて、絶対私も学校司書になるー!って思って司書の資格も取ってみた。でも、やってもいないけれど、どこかで理想と現実(組織的なこと、立場的なことなどなど)に悩み辞めていく彼らと未来の自分が重なったりもしていました(結局なれなかったけど、なれたとしても多分やめてたな、と)。

 

そんなわけで、理想に燃えていた詩織の前任者の司書さんが辞めちゃった気持ちが痛いほど分かった私(←繰り返しますが、学校司書になったことはないです笑)。ものすごく感情移入して読んでました(笑)。

 

色んなテーマが盛り盛りな内容で、本に興味がある人ならとっても楽しい一冊です、これ。ちょっと謎解きからめた本の紹介も多いので、ブックガイドとしてもいいし、本での町おこしが出てきたり、詩織の前任者の永田さんが始める古本屋も面白い。また、学校司書をしてる方だったら、実際にどう手渡すかもすごく参考になるし、翻訳の面白さにまで話は広がる。ね、盛り盛りでしょ(笑)?

 

ただ、ちょっとひっかかる人も多いようで。

それが、詩織の持っているちょっとした能力に関してなのですが、詩織は、モノに触ると、そこに残っている“残像思念”を読み取ることができるんです。 

 

“残像思念”とは、常に働く力ではなく、モノに強い思いが残ってる場合、しかも自分が集中しないと読み取れないというもの。本から詩織はいろんな思いを読み取る。逆に何も感じ取れなかったら、その本は誰の心も打たなかったということ。

 

ああ、これ、なんとなく分かる。本自体が、オーラというかエネルギーみたいなのを発してるというか。そして、そういう本に呼ばれることってあるんですよね。特に言語能力が発達してない年齢の子どもにその能力が高いみたいで。文字読めないのに、そのときにぴったりの本を背表紙だけで選んできたり、というのがうちの子にもあったなあ。

 

ってな感じで、私としては、とっても自然なこととして受け止めてたら、思いのほかこの能力に引っかかって読みづらかった人が多かった模様で(苦笑)。

そうかー。私は読み取れないけど、でも、作者の、編集者さんの、そして手渡す人の思いがこもった本はなんとなく分かる気がする。そうかー、ここに引っかかるのかあ。ちょっと個人的には意外でした。どちらかというと、私は夫との関係や、前任者の不倫話の方が余計だったかな。

 

さてさて、最後にこの本の中で取り上げられる本のリストをあげておきますが、星野道夫さんの話が核になっている時点で、個人的には“おおっ!”でした。詩織はネットから偽の星野道夫さんの最後の写真と言われている写真に興味を持った大隈くんという生徒に、自分の家から『旅する木』を持ってきて渡すのです。そして、この本の成り立ちに思いをはせ、こう思うのです↓

 

大隈くんは読書の習慣がないと言っていたけれど、そういう本の繋がりだけでも知ってほしかった。ネットのネガティブな噂より、現実世界でのポジティブな思いの連鎖に目を向けてほしい。自然の中で命が繋がっていくように、人の思いも脈々と繋がっていく。そうやって生まれた本があることを、図書館を通して伝えたかった。(P.188)

 

最初は、反応が薄かった大隈くんが、どう変わっていくのか見ものですよ!

本を介して、人と人が繋がっていく喜び、ワクワク。読書って個人活動ではあるけれど、思いが繋がっていくんだなあ。

 

続編もあるそうなので、楽しみです!

  

では、最後にこの本に出てくる本のリストをあげておきますね。

 

『モーフィー時計の午前零時』

ヒカルの碁

ハリーポッターと賢者の石』

『「ハリー・ポッター」vol.1が英語で楽しく読める本』

八犬伝

忍法八犬伝

『夜のくもざる』

パン屋再襲撃

『からすのパンやさん』

オカメインコに雨坊主』

『天国はまだ遠く』

『ジャンプ』

『小さな本の数奇な運命』

『極北の動物誌』

旅をする木

ゴールデンボーイ 恐怖の四季 春夏編』

『刑務所のリタ・ヘイワ―ス』

『2分間のミステリ』

『少年探偵ブラウン』

『こちらマガーク探偵団』

『見えない犬の謎』

『The Case of the Dragon in Distress』

『本屋夜話』

『アンのゆりかご』

『トリック交響曲

『黒板五郎の流儀「北の国から」エコロジカルライフ』

マボロシの島』

爆笑問題の日本原論』

『文明の子』

『絵本マボロシの島』

『ストーリーガールPart1』

『黄金の道 ストーリーガールPart2』