Pocket Garden ~今日の一冊~

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最高!文字で味わう極上の音楽

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今日の特集は『聞こえない音楽を聞く~文字で聞く音楽』

 

コロナのことがあってから、最初に打撃を受けた分野の内の一つが音楽業界の人たちでした。それなのに、政府からなーんの保障もない中で、こんなときこそ“音楽の力”でしょう、と色んな音楽家の人たちが立ち上がった。自分たちが被害者と主張してもいいのに......。

 

テレワークという新しい形で、動画で無料配信を始めてくれたことは、本当に本当にすごいこと。そして、その演奏の清々しいこと!また、自宅からのテレワークで、彼らの日常や素顔が垣間見れたのは面白かったなあ。あれにより、新しいつながりが誕生しましたよね。

 

コロナを機に、世界はますます二極化してるような気がします。

今は学びのとき、と自分を急成長させ、ピンチをチャンスに変える人。一方で、情報に踊らされ、不安でいっぱいになり他人を責めることで安心しようとする人。前者でありたいなあ。

 

というわけで、今日の特集は「音楽テーマの物語」なのですが、聞こえる音楽はもちろん素晴らしいのですが、文字で読むと自分だけの極上の音楽になるから不思議ですよね。

 

ここだけの話、物語の中に出てくる曲が聞きたくて、検索して聞いてみたら……あれ?曲調が好みでない(笑)。最後まで聞けなかったことが何度もあります。好みに関わらず、文字で読むと最高を体験できるって、すごくないですか!?

 

ニーズあるのか!?と思いつつ、各物語に登場する曲目リストも最後の方にまとめてみました。マニアックな選び方として、曲目から読む本を選んでみるのも楽しいかも?

では、どうぞ。↓

 

 

『星の歌を聞きながら』 

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『星の歌を聞きながら』(2005年)ティム・ボウラー作 入江真佐子訳 早川書房

【登場楽器:ピアノ】

 とてもドラマチックなストーリーです。分厚いのですが、ミステリー要素もあるので先が気になってしかたない。一気読み!

 

最愛の父が亡くなって以来、主人公ルークは心を閉ざし、すばらしいピアノの才能がありながら、不良たちとつるんで問題を起こしてばかり。しかし、仲間に命じられて忍びこんだ屋敷で、幼い少女との不思議な出会い、変わっていきます。実は、この少女は誘拐された少女で、この辺のミステリー要素も面白い!

 

ほかにも、主人公のルークは、音に色を感じる共感覚の持ち主というところも興味深いし、亡き父をそばに感じたり、ちょっとスピリチュアルも入っている物語。ラストは個人的にはあの場面はいらないな、と思うところもあるのですが(読んだことある方と語り合いたい!)、どっぷり物語に浸りたい時にぜひおすすめしたい一冊。

 

 『アーモンド入りチョコレートのワルツ』

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『アーモンド入りチョコレートのワルツ』(2005年)森絵都作 角川文庫

【登場楽器:ピアノ】

長編はちょっと、という気分の時、短編はいかがでしょう?

ストーリーというよりも、音楽の調べそのものを聞いているかのような物語三編。

ちょっとだけ胸がチクッとして、透明感があって・・・最後は温かい気持ちになれる物語たちです。詳しくは過去記事をどうぞ↓

blog.goo.ne.jp

 


『聖夜』

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『聖夜 School and Music』(2013年)佐藤多佳子作 文藝春秋 

【登場楽器:オルガン】

家を出て行った母親に複雑な感情を抱き、牧師の父親と暮らす18歳のオルガニストの少年。悩み葛藤しつつも、それを環境や人のせいにせず、自分にイラついている主人公が非常にイイ!

ピアノとは違い、一般的に馴染みのないオルガンの世界も面白いです。上記は文庫版。詳細は過去記事をどうぞ↓

blog.goo.ne.jp

 

 

 『その歌声は天にあふれる』

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『その歌声は天にあふれる』(2005年)ジャミラ・ガヴィン作 野の水生訳 徳間書店 

【登場楽器:人間=声楽】

 絶版。十八世紀の英国を舞台に繰り広げられる群像劇。こちらもドラマティック! 児童労働や人身売買といったイギリスの負の歴史に目を向けています。

ディケンズを彷彿させる、と帯にある通り、これぞ物語といった感じで、ぐいぐい引き込まれます!あのヘンデルが、気の短い先生として登場するのも面白い。

詳細は過去記事をどうぞ↓

matushino.wixsite.com

 

 『ひとりだけのコンサート』

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『ひとりだけのコンサート』(1998年)ペーター・ヘルトリング作 上田真而子訳 偕成社

 【登場楽器:ヴァイオリン】

絶版。失業した父親とそれを何とかしようと奮闘する娘の物語なのですが、これは大人になりきれない未熟な大人の物語。子どもの心に寄り添う余裕もなく、人を責め、自ら落ちて行く現代の大人たち。いつだって、子どものほうが物事をまっすぐ見抜いています。詳細は過去記事をどうぞ↓

blog.goo.ne.jp

 

 『アヴェ・マリアのヴァイオリン』

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アヴェ・マリアのヴァイオリン』(2015年)香川宣子作 角川文庫

【登場楽器:ヴァイオリン】

 こちらは文庫版。

過去記事で言いたい放題書いていたら、著者ご本人からコメントが......!!!私の焦った返答を過去記事コメント欄からご覧ください(笑)。

この物語に出てきて感動したのが、徳島県に板東俘虜収容所のお話。戦時中、敵国のドイツと日本の間にこんなにも温かな文化交流があったという実話はぜひ知っていただきたい!こういう歴史もあったということ、ちゃんと知っておきたい。

詳細は過去記事をどうぞ↓

blog.goo.ne.jp

 

 『ふたつめのほんと』

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『ふたつめのほんと』(1992年)パトリシア・マクラクラン作 夏目道子訳 福武書店

【登場楽器:チェロ】

 絶版。きちんとした家庭に憧れるミーナ(チェロ)と、真逆の家庭環境にあるルーカス(ヴィオラ)が所属しているグループでの四重奏。ある日先生がコンサートに出ようと言い出して…。被害者意識に陥らず、“うちはうち、よそはよそ”と受け入れて行くさまが良いです!個人的には、なかなかビブラートが降りてこないミーナの気持ちに共感しまくりでした(笑)。詳細は過去記事をどうぞ↓

blog.goo.ne.jp

 

 『星空ロック』

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『星空ロック』(2013年)那須田淳作 あすなろ書房

【登場楽器:ギター】

ポプラ文庫からも出ています。とても読みやすいので、本が苦手な人にも。

エレキギターに夢中な14歳のレオは、諸事情により、一人でベルリンに向かうことに。そこで色んな人に出会い、成長していく物語。さらっと読めて、色んなテーマを盛り込んでいるので、ここから興味を広げて行ってくれる子がいればいいな。

作者の那須田淳さんはドイツ在住なので、日本とドイツを行き来する物語を多く書かれています。カノンロックは元から好きだったのですが、この物語を読んだ後は随分リピートしたものでした。

詳細は過去記事をどうぞ↓

blog.goo.ne.jp

 

 『この川のむこうに君がいる』

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『この川の向こうに君がいる』(2018年)濱野京子作 理論社

【登場楽器:サックス】

3.11で被災し、県外に移住した者たちのその後の物語。とても考えさせられる物語です。こういう物語がもっともっと出てきてほしい!吹奏楽部の仲間に徐々に心を開いて様子もいいんだなあ。詳細は過去記事をどうぞ↓

jidobungaku.hatenablog.com

 

 

 いかがでしょう?お気に入りの楽器の物語はあったでしょうか?

 

【おまけ】

読書ブログのコンセプトからは外れるのですが、せっかくなので、最近私がハマっているYouTuberピアニストの方もご紹介!

こちらは、動画なので、当然耳に聞こえる音楽ですけど、布教したいので(笑)。

www.youtube.com

 

そのYouTuberピアニストとは、菊池亮太さん!

彼のおかげでゲーム音楽も名曲があることをはじめて知りました。クラシック、ジャズ、ポップスなんでもござれ。コメント欄に怒涛のように流れてくる視聴者のリクエストを、リアルタイムで見ながら、その場でアレンジして弾いていくライブ感が最高!

今晩21時からもリクエストライブがありますよ。

 

【曲目リスト】 

では、最後にマニア向け。文学に戻り、物語の中に出てくる主な曲目リストをどうぞ↓ 

 

■『星の歌を聞きながら』

グリーグ『森の静けさ』

・ドビュツシー『組曲 子どもの領分』『人形へのセレナーデ』『小さな羊飼い』『雪は踊る』

・ゴリウォーグ『ケイクウォーク』

グリーグ『君を愛す』

ラヴェル『亡き王女のためのパヴァーヌ

チャイコフスキー『子どものためのアルバム』『甘い夢』

スクリャービンエチュード 2-1』

 

■『その歌声は天にあふれる』

・トーマス・オーガスティン・アーンの歌

オルランド・ギボンズ『銀色の白鳥』

・ヘンリー・パーセル『ディドとエネアス』

ヘンデルメサイア

ドメニコ・スカルラッティソナタ

 

■『聖夜 School and Music』

・バッハのインベンション

・バッハのトッカータとフーガ ニ短調ト短調BMW535

オリヴィエ・メシアン 『主の降誕』から『神はわれらのうちに』

・ELPの『タルカス』

ムソルグスキー展覧会の絵

・バッハの『カンツォーナ、ニ短調

・スティーリー・アン『ロイヤル・スキャム』 幻想の摩天楼

チック・コリア『浪漫の騎士』リターン・トゥー・フォーエバ

・バッハ『主よ人の望みの喜びよ』

メンデルスゾーン、オルガンソナタ第4番4楽章

・讃美歌111番『神の御子は今宵しも』

 

■『ひとりだけのコンサート』

・ヴィヴァルディのト長調ヴァイオリン協奏曲 

・バッハのパルティー

 

■『アヴェ・マリアのヴァイオリン』

・ヴィターリ『シャコンヌ

・タルティーニ作曲クライスラー編曲『コレルリの主題による変奏曲』

シューベルトアヴェ・マリア

ショパン『別れの曲』

ワーグナー『ターンホイザー』

・ベートーベン『運命』

モーツァルト『ハフナーセレナーデ第四楽章ロンド』

・プニャーニ『ラルゴ・エスプレッシーボ』

・パッフェルベル『カノン』

・『きらきら星』、ゴセックの『ガヴォット』、ボッケリーニの『メヌエット

ヨハン・シュトラウス2世『春の声』

ヨハン・シュトラウス1世『ラデッキー行進曲』」

シューベルト『軍隊行進曲』

・『エーデルワイス

シューベルト『ます』、シュトラウス『ワルツ』

・ベートーベン『交響曲第九番

ヨハン・シュトラウス2世『フランツ・ヨーゼフ1世万歳行進曲』

モーツァルト『ヴァイオリン協奏曲第三番』

モーツァルトアイネ・クライネ・ナハトムジーク

・バッハ『G線上のアリア』」

・フィオッコ『アレグロ』ヴィヴァルディ『ヴァイオリン協奏曲イ短調第一楽章』、

ウェーバー『狩人の合唱』

・バッハ『メヌエット第二番』

・『浜辺の歌』『ふるさと』『蛍の光

 

■『アーモンド入りチョコレートワルツ』

・子供は眠る ロベルト・シューマン 〈子供の情景〉より

・彼女のアリア J・S・バッハ 〈ゴルドベルク変奏曲〉より

・アーモンド入りチョコレートのワルツ エリック・サティ 〈童話音楽の献立表〉より

 

■『星空ロック』

・「天国への階段」Stairway to heaven レッド・ツェッペリン

・リリー・マルレン

・「世界のどこかで」Irgendwo auf der Welt コメディアン・ハーモニスツ

・「ゴールドベルク変奏曲」 バッハ 演奏グレン・グールド

スタンド・バイ・ミー

・イマジン

・アイ・ノー・ザ・ムーン ブロッサム・ディアリー

・ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード  ビートルズ

・カノン・ロック  ジェリーC

 

■『ふたつめのほんと』

モーツァルトK156

 

■『この川の向こうに君がいる』

・Jazzバージョン黒いオルフェ

 

 

ここまで読んでくださった方、すごい!

長文なのに、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。