Pocket Garden ~今日の一冊~

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神話の世界に触れる

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ケンタウロスのポロス』(2018年)ロベルト・ペウミーニ著 長野徹訳


 

ギリシア神話にちらっと出てくる登場人物をフォーカスした物語。こういうの好き!

共感できるか、感情移入できるかと問われると、そうでもないのですが(笑)。

でも、こういう壮大な世界に触れると自分の中の何かが呼び覚まされるというか、凛とする感じがするんですよねえ。大事。こういう物語に触れるの大事。

 

読みやすくて、敷居が高くないのもよいです。

 

ケンタウロスのポロス』あらすじ

舞台は古代ギリシア。若いケンタウロスのポロスは英雄ヘラクレスに出会い、英知を得るための旅に出た。ヘラクレスやアマゾン族に育てられた少女イリーネらの助けをかりて、ポロスは試練を次々に乗り越えるが、そのころ故郷では悪がはびこりつつあり…….イタリアの言葉の魔術師、ピウミーニによる「行きて帰りし物語」。(岩波書店HPより転載)

 

 

佐竹美保さんの表紙絵と挿絵が物語の世界観にぴったりです。そして、登場人物の紹介一覧が最初にあるの親切!この年齢になると名前覚えきれないんですよね(笑)。読書が苦手な子でもこれがあるとないとでは読みやすさが随分と変わってくると思います!

 

理不尽な出来事の数々、信頼できると思ってた人の裏切り、なんどもシビアな世界です。でも、ポロスは感情的になることも悲観的になることもなく、淡々と目の前の事態に対峙する。なんとも落ち着いているではありませんか。

 

そして、なんといっても「行きて帰りし物語」。冒険の先にあるのは、元の世界へと戻ってくることなんですよね。自分自身が変わって。行きっぱなしじゃ逃避。戻ってくるから、逃避じゃないんだなあ。

 

こういう物語は、無意識の世界に働きかけてくる。そして、知らず知らずのうちに力をくれる。

 

ピウミーニといえば、『ストラリコ』も静謐で、とても美しい物語でした。ぜひ↓

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