Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

今からでも読めるクリスマス本

f:id:matushino:20191223111103j:plain

『クリスマスの幽霊』 ロバート・ウェストール作 坂崎麻子・光野多恵子訳 徳間書店

 

クリスマス気分に浸りたいけれど、この時期大人たちは本当に忙しくて、追われてる日々。そんなときは、短編はいかがでしょう?

 

今日の一冊は、ロバ―ト・ウェストールによるクリスマスの短編。どこか暗くて、でも心の中はポッと温かな光が灯っていて。1930年代のイギリス工場地帯にタイムスリップできます。

 

しみじみと、本ってタイムマシーンだな、って思います。

我々人類は、とっくの昔にもうタイムマシーンを開発してるじゃないか、って。

 

 

『クリスマスの幽霊』あらすじ

クリスマス・イヴ。雪のふりつもった美しい町をとおって、ぼくは、父さんが働いている工場へおつかいに行った。すると、エレベーターの中で、不思議なものを見た…壁の鏡に、サンタクロースみたいなおじいさんの顔が映ったのに、ふり返ってみたら、ほかにはだれも乗っていなかった。ぼくが、なんの気なしにその話をすると、父さんと、なかまの人たちの顔色が変わった。エレベーターには、工場をはじめたオットーという老人の幽霊が出る。だれかがオットーを見ると、その日、工場で事故が起こり、死人が出る、というのだ。どうしよう、今日、事故にあうのが、父さんだったら…?一九三〇年代のイギリスの小さな町を舞台に、男の子の冒険と、父と息子のきずなを描いた、心に残るクリスマスの物語。作者ウェストールの回想記を併録。(BOOKデータベースより転載)

 

物語ってすごいなあ、と感じるのは、自分が長年抱いていた印象をガラリと変えてしまう力があることなんですよねえ。こんなにも短い物語なのに。

 

実は、個人的に工場地帯が苦手なんです。ウッて胸がなぜか苦しくなる。景色も匂いも全て苦手で、脇を車で通りすぎるだけでも「早く通り過ぎてくれ」、と逃げたい気持ちになるくらい。

 

ところがですよ。この主人公の男の子の目を通して見た工場は、尊敬する父親が働くワクワクの場。魔法のような場所。そこには、働く大事な仲間がいて、みな誇りを持って働いている。心配しながらも、毎日そこへ送り出す家族の愛情の支えがある。

見える景色が変わりました。

 

そして、今日から!NHKのオーディオドラマでこの『クリスマスの幽霊』をやるそうです。↓

www.nhk.or.jp

 

 

ロバート・ウェストールのクリスマスものなら、『クリスマスの猫』の方もぜひぜひ!↓

 

matushino.wixsite.com

 

商業主義のほうじゃない厳かなクリスマスって、人と人のつながりの温かさを感じられて大好きです。誰もが自分以外の人のことを思う日。

 

みなさま良いクリスマスを✨