Pocket Garden ~今日の一冊~

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想像上の友だちが最強のわけ

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『イマジナリーフレンドと』(2019年)ミシェル・クエヴァス作 杉田七重訳 小学館

 

白の余白中に赤がはえる表紙に惹かれて、手に取った一冊。

とても読みやすく、小学校高学年から、本が苦手な子でもスラスラ読めそうな物語でした。

 

イマジナリーフレンドとは、自分が生み出した空想のお友だち。

小さい頃イマジナリーフレンドが自分にもいたという人、実は少なくないんじゃないでしょうか。おかしな人と思われるから周りには言わないだけで。

 

さて、この物語がユニークなのは、視点がイマジナリーフレンド側からという点。

出版社からの紹介に

イマジナリーフレンドである自分の存在を自問自答し、自分を想像してくれた少女から離れて、様々な子ども達のイマジナリーフレンドを経験していくという新感覚のストーリー。リアルな生活の隣にあるファンタジーを軽妙に描きながら、最後は心震わすあたたかなエンディングをむかえる成長物語 

 

とあるように、ナルホド新感覚。

 

内容的には全然違うけれど、感覚的には映画『シックスセンス』を思い出しました。

自分が死んだことに気づいてない、成仏してない魂たちが、どうして周りが自分の存在を無視するのか不思議がる……それと似ています。

 

イマジナリーフレンド側からの視点といえば、こちらもあります↓

 

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『ぼくが消えないうちに』A.F.ハロルド著 こだまともこ訳 ポプラ社

 こちらはちょっとおどろおどろしい感じがするので、個人的には『イマジナリーフレンドと』のほうが好みでした。

 

ただね、悲しいかな。どちらもリアリティを感じるには、私は大人になりすぎてしまったようです。

 

 ■ イマジナリーフレンドは現実逃避?否!

 

さて、見えないお友だちがいると知ると、心配するのが大人。

現実逃避して、この子大丈夫......?って。

 

でもね、実はイマジナリーフレンドと会話するのって、現実逃避どころか自分と向き合うことにつながるんですよね。

 

スピリチュアル系で言えば、インナーチャイルドとかなんちゃらとかとの会話っていうのは、イマジナリーフレンドとの会話も同じだと思うんですよね。自己啓発系でも何でもいいんだけど、セルフセラピーになっているとでもいうか。要はこれって、無意識との対話。そして、自分を支え、慰めてくれるイマジナリーフレンドの存在は自己肯定感も高めてくれる(拍手!)。

 

小学生や中学生は自己啓発系みたいな本を読まないだろうけれど、実践していることは同じ。だから、イマジナリーフレンドを持ってる子って、精神的に強いと思う。

 

ぼくは、だれかの人生を変えるのに自分が本当に役に立ったという、そのほこらしい気持ちをずっと持ち続けていたかった。それを思い出すと、ほんの少しだけど、自分はだれにも見えない存在ではないと思える。(P.188)

 

これはイマジナリーフレンド側の言葉です。でも、人間も同じだと思う。

人の役に立てるって喜びで、自分の存在意義を確かめられるんだと思います。

それは、他人軸というのとはまたちょっと違う。

 

喜びの人生を。