Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

”冒険”と”本”が溶けあう場

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素敵な素敵な書店がオープンしていた!

 

今日は、とおおおおおっても素敵な書店をご紹介!

アーサ・ランサム・クラブメーリングリストで知りました、感謝)

 

神奈川県大和市の桜ケ丘駅(藤沢駅から小田急線で17分)、東口を出た正面にできた冒険研究書店さん。なんとも、まあ素敵!!!!!としかいいようのない空間でした。いまだ興奮冷めやらぬ。

 

冒険研究書店は、その名の通り冒険ものの本を中心に集めた書店で、植村直己冒険賞も受賞している日本唯一の北極冒険家・荻田泰永さんが開いた書店。

 

子ども達や大人までが新しい世界に触れられるような、

旅と冒険と本を通して世界への扉が開くような、そんな場所を目指しています

 

とHPにあったけれど、目指してるどころかもうなってる、なってる!

 

 

■ワクワク選書&しかけ

こちらの書店、1Fは歯医者さんになっていて、狭い階段を上っていくのですが、階段下から文豪の古本などが並んでいます。2Fにあって、中が見えないって、ちょっとドキドキするというか入りづらいというか、すでに冒険の始まり始まり。

 

階段を上りきると、まず目に飛び込んでくるのが、実際に荻田さんが、北極無補給単独徒歩のときに使用されたソリ(←多分ソリ。間違ってたらゴメンナサイ!)。

1Fから感じた入りづらさとは真逆の、オープンで明るい空間が出現!

 

蔵書は約3,000冊とのことで、真ん中には最新刊、壁を囲む本棚には古書と新刊が混在して並んでいます。

 

冒険ものが中心なのですが、色んなところに児童文学が挟まれているのが、個人的にはもう嬉しくて嬉しくて。ほかにも哲学やちょっと人生を立ち止まって考えるような本も。ちなみに、ご本人にご自身の著書でおススメを聞いたところ、おススメはこちら↓

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『考える脚 北極冒険家が考える、リスクとカネと歩くこと』(2019年)荻田泰永著 KADOKAWA

 

雑貨もちょこちょこ置かれていて、これがまたどれもセンスいいんです!小網代のハチミツとか。木のマグカップとか。

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福音館古典童話シリーズがずらり!↑

 

オリジナルロゴがこれまた素敵で、その絵が描かれた箱も点々と置いてあって、フタをあけると本が入ってる。ちょこまか工夫が楽しい!↓

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すぐにでも旅に出かけたくなるような旅行鞄の中にも本がギッシリ。

あ、この鞄はメルカリで買ったそうです(笑)↓

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訪ねた日は、ちょうどトークイベントがあったこともあり、ゲストの角幡唯介さんの自宅の本棚も再現されていてそれも、とっても興味深かったです。

人の本棚見ると、その人がどう形成されているのかが垣間見れて楽しいですよね。

 

 

■ 荻田泰永さんご自身が最高

冒険もの選書に興奮したものの、実は私自身は、脳内アウトドア派というかエアアウトドア派なので、実際にはあまり詳しくなくて。北極とか孤独で厳しい地に行くくらいだから、荻田さんは寡黙な方か、ストイックで厳しい方だと勝手に思い込んでいたんです。そしたら、実際はとーっても話しやすい気さくな方でした!

 

私は内弁慶で人見知りなので、自分ひとりで訪ねていたら、きっと一言も発することなく店を後にしたと思うのですが、一緒に行った友だちが、やたらとコミュ力高くて爽やかグイグイ系(笑)。なので、つられて私も初対面なのに普通にしゃべることができました!友に感謝。

 

中1次男も連れて行ったのですが、超絶無愛想な次男を前にしても、気さくに話しかけてくれる荻田さん。本の表紙に写ってるソリと、展示されてるソリさして、「これが、あれね、本物」と。続けて、「そして、これがこの人ね」とご自身を指す(笑)。記事を見ると、この書店を開いたきっかけは、コロナ禍で子どもたちの居場所として開放してたこともあったとか。オープンでウェルカムな雰囲気は、そんな荻田さんの子ども好きからもきているのかも?

www.asahi.com

 

■ つながる場としての魅力

と、まあ色々と魅力が満載の書店なのですが、個人的に一番感激したのが、ここが”つながる場”として存在してたこと。

 

すぐに誰もがうちとけられる場所ってなかなかない(私が人見知りなだけかもしれませんが)。盛り上がってる店、個性的な店って、たいてい“内輪感”があって、人見知りな私はいつも入れないし、入りたいとも思えないのですが、ここは違った。

 

ちょうど地方から荻田さんに憧れてやってきた大学生男子が居合わせていて、もうねー、彼と荻田さんの会話が面白くて、深くて。ついつい、話に一緒に入ってしまうおばさんたち(私たち)なのでした。荻田さんがその学生にかけた言葉に共感しまくりで、頷きまくりだったのですが、プライベートなことなので、ここに書けないのが残念。

 

その後、その学生さんが店内にある旅の写真集を広げながら、「ここに行ってみたいんですよ」とか初対面の私たちに楽しそうに語ってくれる。なんて、なんて、あったかい空間なんだろう!そう、まるで旅先で知らない人同士が気軽に友だちになる、そういう空気がこの書店には流れてるんです。それは、紛れもなく荻田さん自身がかもしだす雰囲気がそうさせてるんだなあ。

 

刺激いっぱいで、いるだけで、ワクワク。私のアウトドア熱(エアだけど笑)にも火がつきました!お泊りしたくなる素敵な書店でした。

 

 

 

軽く読めて軽やかな気分になりたいときに

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『夜行バスにのって』(1998年)ウルフ・スタルク作 遠藤美紀訳 偕成社

※毎週月曜・金曜の19時~21時の間に更新中!

(できるだけ19時ジャスト更新!ムリだったら、21時までに更新笑)

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今日の一冊はこちら。

スウェーデンを代表する現代児童文学作家ウルフ・スタルクによる短めの物語。大人なら1時間程度で読めます。ただ、絶版なので、図書館でどうぞ。

 

あらすじ

月がほしブドウ通りを照らすころ、夜行バスを運転している父さんから電話です。「シクステン、おれだ!」母さんと別れてから、父さんの愛情は、ぜーんぶシクステンにそそがれるようになりました。そんな毎日がちょっと息苦しいシクステンは、父さんに、ガールフレンドを紹介しようと思いつきます。不器用な父と息子との愛情を描き、スウェーデンで映画化された話題作。(BOOKデータベースより転載)

 

 

スタルクのって、短い物語が多いのですが、どれも何とも言えず心地いいんですよね。

いわゆる優しい物語というより、ちょっとシニカルでユーモラス。

 

『シロクマたちとダンス』でもそうだったけれど、スタルクに出てくる大人は全然完璧ではなく、むしろ欠陥が多い。それでも、愛情だけはちゃんとあって、それですべてがオーライになってる。大事なのは形じゃないよね、って。

 

主人公も、形だけ見たらネグレクト(育児放棄)に分類されるかもしれないし、多分ほかの作者が書いたら、クラスでの出来事もイジメになるのかもしれない。でも、スタルクの手にかかると、誰もが欠点を持ってて、誰もが愛おしい。

 

何か軽く読みたい、そして、ちょっと素敵な気持ちになりたいときにスタルクはおススメです。

 

 

 

 

閉塞感があるときこそ見たいドキュメンタリー

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『くじらの子』(2021年)石川梵作写真&文・宮本麗写真 少年写真新聞社

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今日の一冊はコチラ!インドネシアで伝統捕鯨を行っている小さな村を撮った絵本。

個人的には写真絵本ってあまり惹かれなくて。でも、長倉洋海さんの写真絵本のときも思ったけれど、こういうのはホント文化遺産

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『トナカイに生かされて シベリアの遊牧民ネネツ』(2020年)長倉洋海写真・文 福音館書店

こういう暮らしをしている人たちが、同じ時代にまだ生きているということを知るだけで、視野がぱぁーっと開けていく気がするのです。

 

といっても、実はまだ『くじらの子』の絵本の方は見ていなくて(←見てないんかいっ!)、見たのは映画のほうなのですが↓

lastwhaler.com

 

もうもうよかったです!!!

 

“すっごくよかったから、これは観たほうがよいよ!”

 

と興奮気味に夫に伝えたら、

 

“それじゃあ、なにがどうよかったのか全っっく伝わらない。”

 

と言われ、何がどうよかったのか説明せよ、的な会社のようなやりとりがあり、夫にすすめるのは嫌になりました。なので、ここでみなさんにおススメします(笑)。

 

インドネシアのラマレラ村で、400年前から続く伝統捕鯨のようすを記録した迫力あるドキュメンタリー

 

予告編をどうぞ↓

www.youtube.com

 

食べるって、命をいただくってこういうことなんだ!と衝撃を受けます。

知ってたつもりだったけれど、こうやって映像で見ると衝撃度が違う。

普段は、映像よりも文字から想像するほうが好きな私ですが、このドキュメンタリーに関しては、水中の様子や空からドローンでうつすことによって、“地球生命体”というものを感じさせてもらった。その技術に心から、ありがとう、って思った。鯨漁のド迫力は、もう自分も船に乗っているような感覚。(おかげで、あやうく船酔いまでしそうだった笑)。

 

感銘を受けたところはたくさんあったのですが、最初に驚いたのは、え?そんな小さな船で???え?そんな原始的な銛で?というところ。

そんな伝統捕鯨が衝撃的なわけですが、映画見たあとで、興味深い記事を見つけました。もちろん反捕鯨も国際的に盛んなので色々紆余曲折もあり、途中大砲による近代捕鯨も導入されようとして根付かなかった、という経緯もあったようです。(その記事はコチラ↓)

news.yahoo.co.jp

 

命がけの漁。

だから、漁の期間は家族と仲たがいをしてはいけないといいます。船を作るのにも設計図などはなく、釘は打たない。とても神聖なこと。

そこには常に祈りがあり、自然とつながっている人たちがいた。

 

これですよね、いまの私たちに欠けている感覚。

人間も大きな自然の一部だ、ってこと。

自分がいかに狭い世界で生きているのか、ハッとさせられます。

 

子どもたちにも大人も、こういうドキュメンタリーを見てほしい。

そして、命を感じてほしい。

ぜひ。

 

 

こわがり屋さんにもおすすめミステリー

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『足音がやってくる』マーガレット・マーヒー著 青木由紀子訳 岩波書店

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今日の一冊は、ちょっとミステリアスな雰囲気をまとったコチラ。

 

秋のもの悲しさってなんか、ミステリーが似合いますよね。いや、まだ夏?ってくらい暑い日もありますが(笑)。

 

とはいえ、個人的にはドキドキハラハラが大の苦手だし、コワがりなのでこの分野は得意ではなく......食欲の秋のほうに走るわけです(笑)。どれだけ、こわがりかというと、推理小説は結末から読んで安心してから、最初に戻って読むという禁じ手を使うくらい苦手←これで、推理小説好きの兄からはめちゃめちゃ呆れられたなあ。

 

そんな、私みたいなミステリー系が得意でない人でも楽しめるかなと思うのが、ニュージーランドの作家でカーネギー賞や国際アンデルセン賞など受賞しているマーガレット・マーヒーの物語です。

 

マーヒーって魔法を扱ったものが多いのですが、いわゆるハリポタ的な魔法ではなく、日常の中に、ごく普通の人に見える人の中で展開される魔法なので、やたらとリアリティがあるんです。ああ、こういうことって、私の見えるところで行われていないだけであって、あるのかもな、って思わせる。だから余計に、ひやりとする。

 

そんな怖いのが苦手な人にもオススメのマーヒーですが、一つ言わせてほしい。

なんで、なんで、オカルトチックな表紙を採用してしまう!?原書の絵がオカルトチックで、日本版に代わって表紙絵が佐竹美保さんに代わると、少しオカルトチックさは軽減されてるけど、でもやっぱり、怖がりには手に取りづらい……。こういうのとか↓

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さて、内容のほうなのですが、ミステリアスな部分は読み進めていくうちに判明する楽しみがあるので、多くは語れません。でも、個人的に受け取ったメッセージは以下の3つ。

 

まず、

 

誰でもありのままの自分を表現したい、受け入れてもらいたい

 

ということ。ここからしか、世界がよくなることにはつながらないんだな、って。

そして、次に

 

想像力の力は無限

 

ということ。魔法も卓越した想像力とそう違わないのかもしれない、そう思わせてくれる物語なんです。

 

最後に、

 

平凡に見える人にも、食い止める力(愛)がある

 

ということ。私なんか、何もできない、と思ってる人。いやいやいやいや。一人の平凡な人の家族を愛する気持ち、これに勝るものはないのかも、そんなこともこの物語は感じさせてくれます。母なる愛。ふっと飛んでいきそうなものをつかみ、地に足をつけてくれる。

 

抽象的すぎて何のこと言ってるか分からないですよね。

この3つのテーマを、足音がやってくるというヒタヒタとした恐怖を通して、この物語は描いてくれた気がしています。秋の夜長にマーヒーはいかがでしょう?

周りの雑音を消すには

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『リズム』(2006年)森絵都著 講談社

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今日の一冊はコチラ。

中高生のバイブルとして読み継がれてきたロングセラーだそうで、それが小学生向きに講談社青い鳥文庫のほうでも出版されたとのこと。うん、青い鳥文庫は、小学校高学年でも、もう読んでるのなんだか恥ずかしい気分(子どもっぽい)気分になっちゃうんから、中高生以上だったら角川文庫こちらよね↓

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説明によると、

ロック青年のいとこの真ちゃんを慕う少女さゆきが自分らしさを探し始める中学3年間の物語。大人になると忘れてしまう中学時代の気持ちや、宝物のように大切な一瞬を丁寧にすくいあげ、「私たちの気持ちを言葉に表現してくれた」と中高生の絶大な支持を得ている森絵都のデビュー作『リズム』と続編『ゴールド・フィッシュ』の2作品を1冊に収録!

 

だそうです。そうかあ、これがバイブルなのかあ。

森絵都さんは好きです。だから、語弊があるといけないのだけれど、でも、ちょっとこれが中高生のバイブルというところが寂しく感じてしまった。いい物語だけれど、もっと世界が広がるような物語もいっぱいあるのに、バイブルはこっちなんだ、って。この物語、好きです。好きなんですけど、でもバイブル???って。

 

次男がいまちょうどこの主人公と同じ中1ということもあり、中1の男女がこんなに饒舌に語り合うかな?とか手紙書くか?とかも思ってしまった。

 

で、調べてみたら、最初に書かれたのは1990年なんですね。だったらありえる。逆に言えば、手紙を書きあう時代の物語だけれど、今の子にも通じるものがあるってことですね!

 

個人的には手紙の終焉って1990年代の終わりごろだと思っていて。私は1997年に留学していたのですが、そのときはメールもあったけれど、まだ手紙で頻繁にやりとりできる時代だったんです。その後も留学時代の友だちと手紙のやりとりが続いたけれど、数年後には完全にメールに取って代わってた。そして、今はLINE。告白だってLINEだそう。

 

個人的に手紙、好きなんです。思い返せば、留学中は毎日のように誰かしらから手紙を受け取ってました。熱心な彼氏がいるのね、と周囲から勘違いされて、リア充とうらやましがられてたけれど、彼氏なんていませんけど?と当時は逆ギレしてました(笑)。いや、どうやったら彼氏ができるのか本気で知りたかった当時(笑)。

 

手紙って、時間差があるからか、メールとは違う温度で、違う内容が送られてくるんですよね。やっぱり画面上の文字よりも”思い”が乗っかる。普段真面目なこと話すことそんなになかったサークルの男子(←男友達だけは多かった。異性ではなく同類に思われてた笑)も、悩み事とか深い内容を手紙に綴ってきたり。物理的距離や時間差があるから、翌日にも会うような相手には恥ずかしくて書けないようなことも、手紙だからこそ書いてこれたんでしょうね。今思えば、宝物。その人、その人の深い人間性や人生に触れられた気がして好きだった。

 

この物語を読んで、そんなノスタルジックな思いにもなりました。うん、手紙っていいです。今の子たちにも、大事なことは手紙に綴ってみてごらん、とすすめたい。

 

と、ついつい手紙が印象的だったので、その話になってしまいましたが、主人公が大好きで大好きでたまらない中卒のいとこ真ちゃん、私も大好きです、こういう人。バンド極めたくて、高校にも進学しなかった真ちゃん。自分にはそんな勇気ないから、余計に憧れる。その真ちゃんがね、“大切なのは自分のリズムだ”っていうんです。周りの雑音に気を取られず、心の中で自分のリズムを取る。

 

主人公のさゆきには、夢を追っかけてる真ちゃんがまぶしい。自分には夢が見つからないことに焦りを感じる。でもね、さゆきは自分のリズムを守るということがどういうことかに気付くんです。高校に入ったら、バイトをして、お客様に笑顔をふりまく。部活を楽しんで、明るい男女交際も楽しむ。そういう小さなことを、いちいち楽しみながらやっていきたい、って。

 

いい!さゆき、いいよー!!!夢のため、未来のためにに今を頑張るのもありかもしれない。でも、未来って今の積み重ねだものね。だったら“いま、この瞬間”をいちいち楽しみながらやっていけば、その先に未来が見つかるよね。

 

私はもういい大人だけれど、専業主婦だった時期、引け目を感じてたときがありました。仕事を続けていた友だちはみな優秀なんてもんじゃないレベルで、すごいキャリアを積み上げていってね。同じ主婦仲間の人も手芸や、プチ起業なんかでどんどん輝いていく……そんな中、私は一体何をやっているんだろう、って。落ち込む日も正直あった。でもね、やりたいこと見つからなくても、それが見つかるかどうかは今の積み重ねなんだから今を思いっきり楽しもう!と思った。目の前にあるものを思いっきり味わおう、って。そしたら、道が開けた(と思ってる笑)。タイミングは人それぞれ。

 

リズム、自分のリズムね。大切にしよう。

 

 

 

素朴さの中にある尊さ

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アイルランド田舎物語 わたしのふるさとは牧場だった』(1994年)アリス・テイラー著 高橋豊子訳 新宿書房

※『あなたのためだけの選書』お申込みの方、順々にお送りしてますので、しばしお待ちくださいね。お待たせしていますが、忘れているわけではないので、ご安心ください。

 

今日の一冊はコチラ!

ああ、まだまだ知らなかった素敵な物語いっぱいあるなあ、と思ったら嬉しくなりました。これ、好きだなあ。1940年代のアイルランド農村の日常を描いた、素朴な物語です。

 

4部作らしい(それぞれ独立してるのでどれから読んでも大丈夫)のですが、残念ながら、4部作のうちの第一作目であるこちらは、もう絶版なのかな?思わず、速攻落札しちゃったじゃないですか(だって好きだから)。二作目以降は普通に売られているみたいです。

 

もうね、牧場好きにはたまらない物語でした!でも、特に何か事件があるわけでもなく、淡々と語られているから、地味にうつるのも仕方のないことかもしれない。

いや、よく読むと事件、あるんですよ?1940年代のアイルランドなので、お祖母さんが逃走中の独立派のメンバーをかくまったり、最愛の弟が亡くなったり。だけど、なんていうのか、とてもフラットに語られているんです。刺激に慣れていると、それが物足りなく感じるのかもしれませんが、読み終えるとね、なんだか素敵なものが心に残る、そんな物語。

 

ああ、これ好きだなあと思った一つの理由は、人間っていいものだな、というのが素直に思えるから。田舎です。当然、クセの強い人や、いってみれば非常識な部類に入る人もいる。でも、あたたかい目で、その人がその人のままで受け入れられていて、助け合っている。分断していない。

 

もう一つは、自然。妖精が当たり前にいる土地での仕事は、神の恵みと命を感じられ、とても尊いものだなあ、って。

 

植えつけがすっかり終わると、成長させるのは自然の役目でした。自然がわたしたちの信頼にこたえ、輝くばかりの緑の芽が吹き出してくるのは、見るのもすばらしいことでした。(P.36)

 

そこに、自然と大いなるものへの祈りがあるんです。人間だけが世界じゃない。だから、田舎の濃い人間関係に囲まれていても、なんだか大きなものに包まれてる気がして、ほっとするのです。 

 

この時代はいいよねえ……?いやいや、厳しい時代だったと思います。でも、子どもの目から見たら、豊かだし、自由があったんだろうなあ。学校教育は、まだこども本位でない時代で、いまより窮屈だったことも容易に想像できます。

 

でもね、アリスは言います、“わたしたちの生活のしかたが、その教育の欠点を補っていた”って。性教育だって、家畜を飼っていれば牡牛の受精も身近だし、自然と学ぶ。学校の帰り道は、素晴らしくて、キンポウゲを摘んだり、鳥の巣をのぞいたり。運がよければ、途中近所の人に及ばれしてケーキをごちそうになったり、ベリーを摘んで隠したり。太陽をたっぷり吸い込み、ゆったりした気分になって、家に着く頃には学校のことはほとんど忘れているんですって。

 

結局のところ、学校はわたしたちが学ぶもっとも大きな世界のほんの一部にすぎなかったのです(P.145)

 

ここです、ここ、いまとの違い。いまは、学校だけが世界になりすぎてますよね。そして、子どもが子どもらしくいられる時間が圧倒的に少ない。

アリスの時代は、家のお手伝いも多いけれど、そのお手伝いの一つ一つが食など生きるために直結していて、尊さすら感じるんです。なおかつ子どもらしく自然の中で遊ぶ時間もたっぷりあった。それが、大事なんだなあ。

 

そして、また児童文学あるあるなのですが、ここに出てくるお母さんがねえ、もうもういいのです!!!かくありたい!

 

日本の昔のお母さんも同じだけれど、アリスのお母さんも忙しくて、言葉で“愛してる”なんてこと言わない世代なんですよね。でも、朝ごはんのときはいっしょにいて、困ってることがあれば何でも聞いてくれて、いつでもあたたかい愛でみなを包んでいたので、わざわざ言葉でいう必要がなかった、って。

 

このお母さんのエピソードで好きなのは、ある日アリスが帰宅すると、台所のドアから水が小川のようにあふれていたというもの。聞けば、お母さんはいつもきれいな服を着せてもらっている近所の一人っ子の女の子を預かっていて、台所の真ん中には砂と水がいっぱいの大きな鉄製のさびた手押し車があるというではないですか。お母さんはこういうのです。

 

こどもはしたい放題するのがいいの、砂と水はとってもこどものためになるのよ(P.168)

 

わあ、理想のお母さん!!!

これ、なかなかできないことですよね!外でならある程度やりたい放題させても、家の中だとつい子どもをコントロールしたくなっちゃいません?汚されたくない、散らかされたくないって……私だけ?

 

素朴でありながら、人間と神と自然との関係性に、なんだか静かに神聖な気持ちにさせられる物語でした。こういうものが、私たちには今足りないのかもしれない。

2作目以降も読むのが楽しみです。

藤井風と児童文学の共通点を探る

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※藤井風さんの画像などは、公式にSNSでの転載利用OKとなっています

藤井風アリーナツアー、初日の横浜アリーナに行ってきました!!!

いやあ、素晴らしすぎました!!!!!まだ、夢の中。

 

そこで、今日はライブを振り返りながら、藤井風と児童文学の共通点を探りたいと思います(←無理やり感?笑)。ええ、児童文学ブログですから。

いや、でもね、なぜそこまで私は彼に惹かれるのだろう、と考え始めたら意外にも、というか必然というか共通点が多かったのです。

 

 

■ライブ感想

まずは、ライブの感想から。いやあ、浄化されました!!!

 

高1長男と行ったのですが、長男はライブ自体が初で大興奮。「お母さん、僕冷めてるように見えるかもしれないけど、内心めっちゃ興奮してるんだからね」って(笑)。

久々に見る人の多さにビックリ。これでも、会場は半分しか人入れてないんだものね。個人的には席一つ飛ばしはゆとりがあって、快適すぎたー。

 

実はね、抽選に当選しただけでも感謝感激雨あられなのに、私ってばどうしてもネガティブな感情が抜けきれなかったんです。同じ日に申し込んだ友人たちはみなセンター席だったから。ええ、当選しただけでもどんなに恵まれてるか分かってるんです、分かってるんです、頭では。でも、感情がね(涙)。私はアリーナで、しかも舞台から一番遠く。肉眼で見えないよ!!!豆粒!!!やっぱり日頃の行い(夫に対する言動)が悪かったのか(←自覚あり)。そして、そんな感情を抱く自分の器の小ささにも嫌気がさして。

 

でもね、始まったら、ぶわっと感動したのですよ。全体を見渡せるこの景色。わー、こんなにみんなから風くん愛されてるんだね、って。おばちゃんが多いかと思いきや、ちゃんと若いファンの姿もあってひと安心。特に若い男の子見かけると、きっと風くん嬉しいだろうな、と妙に嬉しかった。←謎の母親目線(笑)。

 

ライブは圧巻!!!!完全ノックアウト

びっくりするくらいカッコよすぎたし、心に響いた。

 

しゃべるとクセ強めの岡山弁でタラタラゆるゆるしてるのに、パフォーマンス始まると神がかってバシっと決めるの、もう何なん?ネットでよく見かける以下の文面、今まで全然感覚が分からなかったのですが、今回ようやく分かった↓

 

語彙力喪失!

尊い

え?エモすぎてムリ!

ホントに存在してた…

同じ時代に生きれて幸せ

 

ってこういう感覚なのね…。

西洋占星術とか全く興味ないのですが、今年は風の時代とやらに突入したらしい。ああ、風の時代ってこういうことなのね♪ってものすごく納得。時代の申し子。

 

風くんのライブはね、本人いわく、みんなで心のお掃除しましょ、って。

ネガティブなもの、一つ一つ手放しましょ、って。うん、それ聞いてね、夫に文句言おうと思ってたこと忘れることにした(笑)。風くんが今回語っていたことで印象に残ったこと、それは、

 

良いことにも悪いことにも執着しない

 

って、あなた人生何回目ですか!?!?24歳?これ礼拝の説教か何かなの?

言ってることはめちゃめちゃスピリチュアルなのに、カルトっぽくならないところがすごい。このバランス。俺ってすごいだろ?的なところ、自己顕示欲が皆無だからかもしれない。圧倒的な華があって、神さまとか天使なの?と思わせるけど、いわゆるカリスマとは違う。自然体で同じ目線で寄り添ってくれるから。

 

■児童文学と藤井風の共通点

さあ、ここからは、児童文学との共通点いきますよー。

あ、児童文学といっても子ども向けのものすべては指していません。ただの児童書と思うものもあるので。時空を超えて心に響くものを指すと思ってください。

 

共通点、いっぱいありました。

 

■共通点①:人間だけが世界じゃない

“いまツライかもしれないけど、生きてるって悪くないよ、結構いいもんだよ”

“人間だけが世界じゃないよ。自然とか大きなものとつながろう?”

 

そう語りかけてる、児童文学も風くんも。大人の文学になるとね、心のモヤモヤや苦しさを表現してくれたりはするけれど、最終的に必ずしも“生きてるのっていいものだよ”というメッセージにならないケースも多いんですよね。

 

前回の日産スタジアムでの18万人同時視聴の無観客ライブは、ピアノ1本で雨の中弾き語りをいう伝説のライブになりましたが、そのとき風くんは、”みんな深呼吸しよ、休んでもええんやで”、と芝生に寝転んで昼寝をし始めました。……雨の中ね!いや、ホントに寝転ぶんかい!とみな心の中でツッコんだよね。声は多少上ずってた気もするけど、でも見てほしい。特に“優しさ”という曲、圧巻でした↓

www.youtube.com

 

■共通点②:誰にでも分かるやさしい言葉

児童文学も風くんも、難しい言葉は一切使わない。誰にでもわかる、むしろあっさりしすぎるくらいの言葉しか使わない。説明調じゃないから、それぞれが解釈できる余白があって、価値観の押しつけじゃないんだなあ。それぞれが、それぞれのタイミングで自分で気づけるようになってる。

 

実は、風くんの曲、そんなに好みじゃないものもあったんです。私、洋楽派なので、風くんの洋楽カバーは好きだけど、オリジナルの歌謡曲調なのはあんまり…って感じでした。だけど、ふとしたタイミングにこの歌詞って!!!ってなるんです。あと、ライブで聞くと、どれも尋常じゃないくらいにかっこよかったし、響いた。

 

ちなみに風くんの洋楽カバーで、個人的に好きなのはこれ↓

www.youtube.com

 

■共通点③:商業主義を感じない

“売れる”じゃなくて、良いものを届けたいという思いがバシバシ伝わってくる。児童文学もね、このテーマで書いたら売れるっしょ、って時代に迎合したものは売れるかもしれないけれど、すたれるのも早いんです。手渡したいと思われるものが残る。売れなくても残る。

 

色んなバンドとか歌手見てきたけど、売れてくると単なるメロディーメーカーになってしまうケースって多かった。粗削りだったけれどよかった、初期のような心を動かす何かがなくなっていくんですよね。でも、チーム風は、風くんが納得いく曲が出来たタイミングがデビューのタイミング、ってスタートから違ってた。マネージャーのずっずさん(河津知典氏)も素晴らしすぎてね、もはや私ずっずファン。風くんアプリ(無料)で読める、ずっず日記が尊すぎて、もう、ありがとー。

 

そして、こんなにもファンから”どうか音楽業界に消費されるようにならないよう、ずっずさん風くん守ってあげて”とコメント欄で言われる人も珍しいのでは?なんか、売れるとか次元が違すぎて、音楽番組が似合わない彼。取り上げられるのは報道番組ばかりなのが、なんか納得。彼の音楽は消費されるものと違うんだなあ。

 

■共通点④:成長物語

児童文学って、基本、成長物語なんです。そして、風くん自身も成長物語。彼の中学時代からのYouTube動画遡ってみるともう、涙腺がね。天才とか言われるけど、努力の人。成長って、背伸びと似て非なるもの。風くんも常に挑戦し続けて、成長し続けてるけど、自分を今の自分以上に大きく見せようとはしないところがすごいな、って。まさに等身大。等身大を更新していくというか。今って、どう競争社会の中で勝ち抜くかとか、人より抜きんでるかとかそんなハウツー本ばかりで、げんなりする。けれど、挑戦するのは昨日の自分に対して、ですよね。

 

岡山の片田舎(失礼)から出たことがなくて、でもYouTubeの画面の向こうにいる見知らぬ人に向けて心を込めて弾き続けた。変顔してふざけながら。周りが大学に進学しても、一人部屋から発信し続けた。腐ることなく。11年前の中学生の動画が残ってるってすごいですよね。この頃からのファンの人、うらやましいなあ。

 

■共通点⑤:自分(作者、歌い手)は単なる宇宙の道具

風くんの口からこれ聞いたときは、やっぱりね!となりました。Billbordのインタビューで語っています↓

www.billboard-japan.com

 

自分はメッセージを伝える単なるツールにすぎない、なんかちょっと真面目すぎたり、重かったりするメッセージをいかにゆるく、軽く、カッコよく、カジュアルに伝えられるかを意識している気がします、って。

 

私が好きな児童文学作家さんたちもいわゆる“降りてくる”タイプの人たち。どうして、自分がこの物語を書けたのか、分からない、って。自分は何かに書かされてた、って。だから、こう書いたら読者(聞き手)は感動するだろう、とかねらった感が一切ないんですよね。そして、子どもでも分かる言葉で書く。

 

ちなみに風くん、歌詞は誰にでも分かるけれど、曲は玄人向けと言われる。誰もに受ける曲調じゃなくて、かなり攻めてる。だから、最初聞いたときは正直ピンとこなかったんですよね、私素人だから。でも、飽きない。どんどん好きになる不思議。スルメ曲…。

 

■共通点⑥:それぞれが主役

あとね、私の好きな児童文学には、もちろん主役はいるけれど、それを取り巻く人たちもみな素敵に描かれているんです。ほんのちょっとしか登場しなくても、それが垣間見られる。それぞれが人生の主役であって、脇役なんていない、と。ちょっとしか登場しない、この人のストーリーを別で読んでみたい、そう思わせてくれる。

 

チーム風くんの周りも同じ。通常は裏方、黒子に徹して表に出てこない人達にも何かとスポットライトを当てるし、必ず名前を全員出す。色んな人が自分の得意分野で輝いていて、みんなで作り上げてるということを見せてくれる。彼だけが輝こう、彼だけを輝かせよう、だなんて思ってない。そこが、すごく好き。

 

今回のライブは、日産スタジアムの無料ライブのときとはガラッと変えて、まさにエンターテイメントに徹していた。照明さんなどステージに関わる人、みな嬉しかっただろうなあ、と思うバッキバキに決まったライブだった。でも、彼とピアノだけにスポットライトが当たった日産スタジアムも、BTS(Behind The Scenes)で、実は多くの人がかかわってたこともちゃんと見せてくれた↓

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■共通点⑦:一言でまとめると真理

児童文学にも風くんにも根底には“愛”が流れてる。動機は愛。目指すところは平和。そして、“真理”が語られてる。だから、誰にでも分かる言葉で語るし、こんなにも人の心を動かすんだなあ。

 

風くんのコメント欄ってね、みなさんそれぞれが自分の人生、物語を語り始めるんです。それが、気持ち悪いという人もいるけど、そう思う人はかわいそうだな。語らずにはいられない、というのはそれぞれの心の深いところに届いたということだと思うんです。思いがつい溢れちゃう。

 

あーあ、長文のわりに、この感動が伝えきれなくて、もどかしい!

あ。だから、”語彙力喪失”っていうのか(笑)。

 

10月14日NHKで風くんの密着番組放映されるそうです!我が家にはテレビないのでじいじに録画頼みましたが、ある方はぜひぜひ↓

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