Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

はなむけに贈りたい絵本

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ルピナスさん』(1987年)バーバラ・クーニー作・絵 掛川恭子訳 ほるぷ出版

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今日は次男の入学式でした。

他の学校より1週間遅いのは、寮生活への準備があるから?

長男に引き続き、次男も寮に入ることになりました。

 

中学生でもう手放しちゃうの?よくできるね。

寂しくない?私ならムリ!

 

色んなお言葉いただきますが、その家庭それぞれということで。親子で熟慮した結果の、我が家の(今のところ)ベストな選択。

 

寮生活をへて、帰ってくるたび内面が成長する兄を見て、“自分もここに行きたい!”と次男自身が決めたのでした。親からすすめられてたら、次男の性格的に意地でも選ばなかったと思う。だから、私は「あなたは(長男と)同じ学校行かなくていいよ~」と常日頃言ってました(笑)。

 

そんな次男に心の中で贈りたいのが、今日の一冊 & 後半で紹介する曲です。

 

ルピナスさん』は、小さい頃から何度も何度も読んできました。

内容は大人向けかな?とも思ったりもするのですが、うちの子どもたち、みーんなこの絵本が大好き。

 

でもね、旅立ちの日に向けて読んだら、なんだか押しつけがましいから、いかにもそのとき!ってとき以外のときに読んでおいてよかったな、としみじみ思ったんです。

以前、三男に読み聞かせていたとき、既に中学生になっていた一時帰宅中の長男が「あー、これ好き!」と興奮気味に言ったあと、照れて「中学生で、絵本好きでおかしいよね、はい、おかしいですよね、ハイハイ」って言ってて、嬉しくなったんですよね。おかしくないよー。

 

ルピナスさんが教えてくれること、それは、“世の中を美しくすること”。

内容は過去記事をどうぞ↓ 

blog.goo.ne.jp

 

もう一つ、次男の潜在意識に向けて(笑)贈っていたのが、最近私がどハマりしている藤井風さんの『旅路』という曲です。

「今日も藤井風かよ!」とあきれつつ、気づけば口ずさんでる次男。しめしめ(笑)。

何かの拍子に思い出してくれるといいな。↓

www.youtube.com

 

藤井風さんを知ったのは遅ればせながら数カ月前です。

色んな人から急に名前を聞くようになって。“若いのに死生観がすごい”というコメントに興味を覚えて、聞いてみたのが始まりです。

 

私の場合は、パッと聞いて「うわぁ~、最高っ!」という感じではなく、なぜみなこの人に惹かれるんだろう?という感じだったのですが、スルメ曲でした。

突然大切な友人を失い、途方にくれていた私を慰めてくれたのがこちらの歌で、亡き友人を思いながら毎日聞いてしまいます。↓

www.youtube.com

 

コメント欄も愛にあふれていて平和で、コメント欄もついつい読んでしまうんですよねえ。そして、沼にハマった私は、彼の中学生時代の動画にまで遡り、家事が手につかず(←藤井風沼あるある)、寝不足(笑)。最新の武道館ライブ映像もかっこよすぎて、もう、どうしてくれよう。ピアノに飛びつくの無邪気すぎる~!はい、止まらなくなりそうなので、この辺で(笑)。

 

というわけで、どの本や曲もそうなのですが、いかにも今にぴったりでしょ?ってときには、人は素直に受け取れないかもしれない。だからこそ、常日頃から種まきのつもりで読んだり、聞いてたりするの大事なのかなあ、って。

 

がんばれ、次男!

 

 

文字で味わう音楽で浄化されよう

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『そして、ぼくの旅はつづく』(2012年)サイモン・フレンチ著 野の水生訳 福音館書店

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今日の一冊は、小林万希子さんの表紙絵がとーっても素敵なこちら!

 

旅と音楽、それに出てくるのは思いやりのある人ばかりの、穏やかで優しい世界。

ああ、自分はこんな風に丁寧に子どもの気持ちに向き合える大人になってないなあ、と反省しきりです。

 

主人公のアリはドイツの少年で、幼い頃交通事故で父親を亡くし、母親と旅に出ます。そして、旅先で出会った人と母が再婚することになり、ドイツからオーストラリアへ移住。大好きな祖父と別れるのはつらかったけれど、ヴァイオリンの才能がある彼の傍らにはいつも音楽があるのです。この祖父がねえ、もうもうとっても素敵なんです。娘に対しても、孫に対しても、理解と思いやりのかたまり!ああ、こういう風に年を重ねたいなあ。

 

さて、こちらの物語、アリ自身が語る物語なのですが、アリの境遇ってそうそう感情移入できるものでもないし、なかなか入り込めない人もいるかも。子どもだったら、本好きじゃないと、とっつきにくいかなあという気もします。文章は平易なんですけどね、気持ちが乗っかるのが難しいかも。

 

とはいえ、読了後は何かきれいなものが自分の中にも流れてきたような気持ちなれます。

 

そして、いつも思うのですが、やっぱり文学で読む音楽は最高ですね!聞こえない音を聞くのは、とても豊かな気持ちになります。

 

以前、音楽テーマの本を特集した記事もよかったら↓

jidobungaku.hatenablog.com

 

 

 

 

 

夕飯作りたくなーい、と思ったら

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『そして、バトンは渡された』(2018年)瀬尾まいこ著 文藝春秋

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2019年の本屋大賞となり、今年の秋映画化される話題作。

 

話題作ってあまり読まないのですが、美味しそうな食べ物が出てくると聞いて、手に取りました(笑)。

 

私には五人の父と母がいる。その全員を大好きだ。

高校二年生の森宮優子。
生まれた時は水戸優子だった。その後、田中優子となり、泉ヶ原優子を経て、現在は森宮を名乗っている。
名付けた人物は近くにいないから、どういう思いでつけられた名前かはわからない。
継父継母がころころ変わるが、血の繋がっていない人ばかり。
「バトン」のようにして様々な両親の元を渡り歩いた優子だが、親との関係に悩むこともグレることもなく、どこでも幸せだった。(出版社作品紹介より)

 

読んだ感想は、あ、あれ?みなさんが言うほど……。

あー、やっぱり私は話題作とはあまり肌が合わないかも。

すっかり児童文学体質になってしまっている今日この頃。何かが物足りない。

素直に感動できなかった自分も悲しい……でも、ま、そんなこともありますよね。

 

淡々と書かれていて物足りないという感想もよく見かけましたが、それを言ったら淡々さにかけては、児童文学も負けてない(笑)。

うーん、なんだろう。面白い設定だなあ、とか思ってしまって、追体験しているというよりも読者として離れてみている感じがしてしまったというか。

 

でも、親がひんぱんに変わることを周囲は心配しても、主人公は気にしてないところとか、すごく好きでした。

こういう状況、環境だったらかわいそう、って周りが決めるな!って思うから。

周りが思うほど、本人は不幸じゃないってことありますよね(逆もあるけど)。

そこが、現実的でないと感じる人もいたみたいだけれど、私は、そこはすごく好きだった。

 

あとは、無理してでも主人公が義理の父である森宮さんの料理を食べきるところ!

こういう人大好き。食べ物残さないの、大事。

 

別の話題作で、せっかく物語も出てくる食べ物も好きだったのに、主人公がお上品なつもりなのか、当たり前のように食べ残すところが許せなかったことがあるんですよね(笑)。美味しいとか言いながら、残すなー!、って。

昔から、かわいい女の子たちが、“おいし~い、おなかいっぱい♪”と平気で食べ残したり、“ひとくち交換こしよー”とか言って、そんな少しじゃワカラナイだろうというくらい、カスかと思うくらいのかけらを取って“おいし~い♪”とかいうのにイライラしてた質なので、そういうの許せない(笑)。美味しそうに、豪快に食べる人が好きです!

 

さて、そんなこんなで物語には、いまいち入り込めませんでしたが、それでも読み終えたあと、

“ああ、家族に笑顔になってもらうために料理を作れるって幸せなことなんだ。何作ろっかな”

という気持ちにさせてくれたので、読めてよかったです。

 

毎日、毎日もう何料理したらいいか分からなーい。

あー、今日は作りたくないっ!

と思ったら、この物語はおすすめ。

疲れて帰ってきても、優子のために頑張って料理を作る森宮さんがえらすぎて、あー、たまには誰か作ってよー、なんて思っちゃう自分が恥ずかしい。

 

誰かのために作る喜びを思い出させてくれる、そんな物語でもありました。

不登校児という言葉は時代遅れ

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『バーバーパパのがっこう』(1976年)A・チゾン、T・テイラー作 山下明生訳 講談社

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先日、私の周りで話題だったこちらのニュースに出てきたものです!こちらのスピーチ、素晴らしいので、ぜひリンクに飛んで全文読んでみてください。 ↓

news.yahoo.co.jp

 

岐阜に出来た公立の不登校児専門の中学校。公立というところが素晴らしい。

40名の定員に対して、120家族が説明会に参加したそうです。ニーズの高さよ!

 

やっと、やっと時代がついてきた……!いや、まだまだだけど、でも、希望の光。

全国に広まってほしい。不登校の子を、元の学校に戻すことだけが目的になってるのって、違いますよね。必要としてる子が通える範囲に、こういう学校の選択肢があってほしい、これからの時代は。

 

でもね、“不登校児”という言葉の響きがね、なんだかもう時代遅れな気がするんです。

ネガティブな響きがある気がして。

 

”革命児”とかでもいいんじゃない!?いままでフタをされてきたものに風穴を開けてくれる、新しい時代を切り開いてくれる革命児。

 

それに、環境になじめない子がこんなにも増えてきたのだから、学びの環境の選択肢を増やすのは、大人の仕事ですよね。うん。

学校って、ただただ我慢を学ぶ場じゃないですよね。我慢って、時には大事だけれど、果たして、学校のそれは我慢するに値する内容なのか、と考えてしまう。自分が学びたいものの中で訪れる試練や我慢しか、成長にはつながらない。

 

子どもに問題があるんじゃない。体制に問題がある。

でもね、そう思っても、行けない子やその家族は苦しい思いをするんです。

 

だって、不登校のうちが苦しむのは、少なからず“世間の目”や“周りの無理解”だから。

だから、世間一般の考え方も変わらないと、と思うのです。

 

それに、不登校に理解あるつもりでも、いざ我が子が不登校になると、親はどうしていいか分からなくなるんですよねえ(うちはそうだった)。

いつまで続くんだろう、このままだと将来どうなっちゃうんだろう……負のスパイラルに陥る。やりたいことがある子が不登校になるのならいいけれど、やりたいことがなくて、YouTubeやゲーム漬けなのはどうなの!?って。

 

そういうときに検索してしまうネット情報は、“魔物”だなと思います。

さらに不安に陥るような情報ばかりがアンテナに引っかかってしまうので、見ないほうがいい。

 

だから、こういう学校や、この京大准教授のスピーチみたいなものをもっと大々的に取り上げてもらいたい!!!不安に陥っている人たちの目に留まるように。希望の光が見えるように。

 

スピーチの中でこんなことが述べられています。↓

 

いま学校現場は、たくさんのことを要求されています。グローバル人材、スーパーサイエンス、SDGsさらにプログラミング。これを全部できたら、スーパーマンにしかならないですよね。そんな大人は町の中に何人いるのでしょうか。

 

そんな大人が見当たらないにも関わらず、なぜかみな、学校に、たくさんのことを要求してしまいます。すべてを学校にやらせすぎな気がします。学校がやるべきことは、子どもたちの学びの機会を奪わないことです。子どもたちが学びたいと思ったときに、学べるような環境を用意することだけが唯一、学校に課せられた使命です。学びを嫌いにさせるのはもってのほか、絶望しそうになったときに学びを諦めない、そんな子どもたちに育つ場所が学校なのだと思います。

 

ほんと、そう思う。

 

小学校だったら、こちらの大阪市立大空小学校のような学校がもっともっと増えてほしい!↓

blog.goo.ne.jp

 

少しずつでも、着実に変わっていくと思うし、変わらなければ、と思います。

そのためには、まずは大人たちの一人ひとりの意識を変えること。

 子どもたちは、いつだって、大事なことを教えてくれ、大人たちにも、学びを与えてくれますね。

中高生からの政治

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『THIS IS JAPAN 英国保育士が見た日本』(2019年)ブレイディみかこ著 新潮文庫

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今日の一冊は、児童文学ではないのですが、4月から高校生になる長男に政治系の本でおススメを聞かれたので、中高生でも読めるものとしてご紹介。

 

いやあ、驚きました。

まさか、長男がねえ。風は突然吹いてくるんですね。

 

うちの長男、ブログでも何度も暴露してしまっていますが、とにかく本を読むのが苦手。文字が苦手。漫画ですら、“絵しか見ない!”と威張ってるほどです。

そんな長男がですよ?

「最近、新聞読んで政治とかに興味を持ってるので、おススメの本を教えてほしい」

と突然言ってきたんです。本もびっくりだけど、政治に興味を持ったのにも、もうビックリー!

 

どうやら、先輩の影響らしいのですが、成長を感じる(感涙)。

 

しかし、私、政治的なものあまり読んでいなくて。どなたか、おススメあったら、ぜひ教えてください。

 

ちなみに、私が長男に最初にススメたのは、こちらです↓

jidobungaku.hatenablog.com

 

長男の学校は、貧困問題への関心も高く、活動も行っていたりもするので、まずは物語で、追体験してほしかった。政治を本や新聞の中の世界ではなく、自分事、身近に感じてほしかった。というのも、私自身が長年、政治を身近に感じられなかったから。

 

次におススメしたのが、今日の一冊です。

……まあ、肝心の長男は、どちらもまだ読んでおらず、教えてといったわりには画面ばかり見とりますが(笑)。

 

ブレイディみかこさんといえば、こちらを読んで、イギリスの話ではあるものの、初めて政治を身近に感じられたんですよね。↓

jidobungaku.hatenablog.com

 

で、今回の『THIS IS JAPAN』。積読状態でしたが、長男に聞かれて、急いで読みました。興味深かったです!いやね、最初のほうはイギリスの話が多くて、いつになったら日本が出てくるんだろう?って感じでもあったのですが(笑)。でもね、やっぱり外を見ることで、比較することで、日本の姿が浮き彫りになってくるんですよね。

 

「考えたくない」日本人。

私もそうだったかも。

そして、世の中を変えることに興味を持って運動していた学生たちも、社会人になると忙しすぎて、その暇すらなくなっていくと……。

 

なぜ日本では草の根アクティヴィストが育たないのか。

なぜ日本のNPOは、政治とか政策とかいうマクロな話ができないのか。

 

ミクロ(地べた)にマクロ(政治)を持ち込め!

 

そうか、思ってみればそうだなあと思うことがいっぱい。

 

個人的に印象的だったのは、ミクロからマクロに向かわない考え方に慣れると、運動も地べたの切実な問題を訴えるのではなく、いきなり手もとから遠いところの問題に向かってしまう、というところ。安保法制も政府の思惑で、そちらに意識を向かわせて抽象論を展開しておいて、暮らし自体をみさせないという、と。

 

“……憲法9条を守れ、戦争を起こすな、と言っていますけど、戦争をなくすのに一番有効なのは貧困をなくすことです。貧困、格差、差別、抑圧をなくすこと。戦争に行きたいと思う人たちは、自分は報われていないと思う人たちですから。”(P.90)

 

そうなんですよねえ。

 

ブレイディみかこさんは、日本滞在中に色んな人をたずねるのですが、最後に青空自主保育で締めくくられたのにも驚きました(うちの三男は青空自主保育出身)。

 

さて、私は長男からのおススメのこちらを今から読みます。長男もまだ読み途中らしいですが(笑)↓

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『14歳からの社会学 これからの社会を生きる君に』(2013年)宮台真司著 ちくま文庫


おススメがあったら、ぜひ教えてください!

 

 

こんなことってある?というのがBLM

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『キャラメル色のわたし』(2020年)シャロン・M・ドレイパー著 横山和江訳 鈴木出版

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今日の一冊は、こちら。

だいぶ前に読み終えていたのですが、ご紹介が遅くなりました。

 

とても読みやすいです!本が苦手な子でもスラスラ読めそう。

そして、読みやすいのに、考えさせられるんです。

 

実は、今回は、あらすじも何も読まずに予備知識なしで読み始めたんですよね。

なので、最初は、ああ共同親権の間で揺れる少女の話なんだなー、って思っていたんです。

 

主人公イザベラのママは白人、パパは黒人。親が離婚してしまったので、それぞれの家を1週間交代で行ったり来たり。同じ地域に暮らしているので、幸いにも学校は変わる必要はないんですね。

 

で、1週間おきに日記のようにイザベルの気持ちが綴られるわけなのですが、1週間おきって本当にめまぐるしい!読んでいてもめまぐるしい!

ママとパパはイザベルへの呼び方も違うし、肌の色も違うし、イザベルはアイデンティティにモヤモヤしちゃうわけです。

 

そんな風にテーマは重いのですが、主人公のイザベラのいかにも現代っ子らしい明るさを持った口調で語られるので、軽快に物語は進んでいきます。

 

ところで、個人的に印象的だったのは、改めて海外って言葉での愛情表現がすごいなー、ということ。離婚はしたけれど、いかにその子のことが大切か、宝物と思っているかをこれでもか、ってくらい伝える。日本でもいまや離婚は珍しくないし、「あなたのせいじゃないからね」と伝えることはあっても、こういう風に愛情を頻繁に伝えるというのは少ないんじゃないかな。

 

でもね、ふと、あれ?これもしかして大人側の「離婚しても子どもをきちんとかわいがってる自分」というアイデンティティなのかな?とも思ってしまった。

離婚した相手よりも、子どもに愛情を注ぐことを示すことで、無意識かもしれないけれど競い合ってるというか。イザベル自身もそれを感じるから、どこにも属してない気がするのかもしれない。ものすごく愛情注がれてるのに、「どうして私の気持ちを考えてくれないの!?」となるのはそのせいなのかも。

 

そんなモヤモヤを抱えつつも、友だちやパパの恋人の連れ子である兄と楽しく過ごしていたイザベルに、突如としてふりかかった事件。

 

悩みはあれど明るい感じで進んでいただけに、もうね衝撃でした。

そんなことって、ある!?!?

 

これが、Black Lives Matterか。

 

日本人には関係ない?いいえ、ぜひ物語を読むことで追体験してみてください。

きっと、色んな“問い”が与えられると思います。

 

こちらの2冊とあわせて読むと、より理解が深まると思うので、ぜひ!↓

jidobungaku.hatenablog.com

 

jidobungaku.hatenablog.com

 

 

 

マニアックな世界は興味がなくても面白い!

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『鉄のしぶきがはねる』(2011年)まはら三桃著 講談社

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今日の一冊は、工業高校を舞台にしたコチラ!

 

ああ、もうどうして好きなものに打ち込んでる人って、こうも魅力的なんでしょう。

まっっっったく興味のない世界でも、魅了されてしまうし、追体験できるのは読書ならでは。これだから、読書はやめられないなあ。

 

個人的には、申し訳ないけれど、工業製品って全然魅力を感じないんです。むしろ苦手なくらい。それがねえ、読み終えた頃には印象がガラっと変わってしまうんだから、物語の力ってスゴイ。

 

しかし、そんなわけで、この物語に出てくる用語は分からないものだらけでした。

まず、物語の中心になってる旋盤ってなんぞや?そこからして、ワカラナイ文系人間の私。挿絵があったら、よかったのになあ。なんでもググれば(Google検索すれば)分かる時代だけれど、挿絵のほうが、より本の世界に入り込めると思うんです。そこだけ、残念!

 

さて、主人公の心(しん)は、工業高校唯一の女子。悲しい過去から、人は裏切るけど、コンピューターは裏切らないと思って、“コンピューター研究部”に所属しています。が、ひょんなところから“ものづくり研究部”という心から見れば、時代遅れなことをしている部を手伝うことに。そして、ここからは、もうマニアックな世界ですよ!

 

文系人間から見れば、ただの切り出されたサイコロ状の鉄の塊。でもね、手触りのなめらかさ、信じられないくらい微妙な差異の世界。気づいたら、心と一緒に心奪われてた、鉄に、道具に。そして、知るものづくりにおける掃除の大切さ。

 

当初、旋盤を古臭い技術と見なしていた心に、先輩の原口が鬼の形相で言い切った言葉が忘れられません。彼は「ものづくりはなくならない」と言い切るんですね、なぜなら

 

「ものづくりは、楽しいからだ!」(P.74)

 

響きました。ズシンと響いた。

 

そして、トラブルが起きたときの先生の言葉も、

 

「何かに一生懸命になっとる時、それが本物かどうか、人は時々試されるんよ。本物になりたかったら、そこで踏ん張れ」(P.121)

 

うーん、ここだけ抜き出しても、ありふれたフレーズかもしれない。でもね、物語を追体験して120ページ過ぎたところで、言われるこの言葉には重みがありました。

 

自分とは縁のない世界が見れて、面白かったです!まはら三桃さんは、こちらもおすすめ↓

jidobungaku.hatenablog.com