Pocket Garden ~今日の一冊~

大人も読みたい、大人こそ読みたい、大人のための児童文学の世界へご案内

ママ友付き合いが苦手な私が、積極的にしていたこと

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公園が苦手……

子どもが未就学児時代のママ友付き合いが、私とっても苦手でした。

 

いや、今も得意じゃないけれど、小学校に入ってしまえば、子どもの付き添いはマストじゃないから、自分から望まない限り付き合う必要もないから。

 

一番ストレスだったのは未就園児時代。

 

遊具のある公園とか苦手だったので、極力行かなかったですねえ。子どもは行きたかったかな?とちょっと悪かった気もしますが(でも、遊具のない自然の中では遊ばせてました)。

 

“あ、順番守ろうねえ。ごめんなさいは?”

”ちゃんと、貸してって言おうね?これお友だち(←初対面)のだよね?”

 

とか。もうそれ、子どもに教えてるというより大人同士の気の遣い合いよねえ?っていうのに耐えられなくて。

 

下の子連れていれば

 

“何カ月ですかぁ?もう、寝返りうちましたぁ?”

 

とか、どーでもいいわっ(←すみません、暴言)。

 

そんなんで、親同士ができるだけ口出しをせず子どもを遊具なしで遊ばせられる“泥んこの会”なるものを立ち上げたりもしたのですが、それはまた別の話。

 

今日は、そんなママ友付き合いが苦手な私が、積極的にしていたことを書いてみようかと思います。

 

積極的にしていたこと……それは、お宅訪問。

 

苦手なのに、お宅訪問!?

とお思いかもしれませんが、ええ、お宅訪問は好きでした。

単純によそのおうちのインテリア見るのが好きというのもありますが、何よりも話の糸口が見つかりやすいから。

 

多分、話してみれば魅力的でない人なんていないんだと思うのですが、公園では話の糸口が見つかりづらいんです。

 

それが、お宅訪問するとその人の考えてることが形に出やすい。

置いてあるもの、食べ物、そして何より……どんな本があるか!

 

置いてある絵本で、ああ、このママとは話せそうだとかそういうのが即座にわかるんです。

まわり道しなくていい!!!

 

えー、ベスコフがある!

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『ペレのあたらしいふく』(1976年)エルサ・ベスコフ作 おのでらゆりこ訳 福音館書店

センダックもお好き?

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かいじゅうたちのいるところ』(1975年)モーリス・センダック作 じゅんぐうてるお訳 冨山房

バーバラクーニ―も!?

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『にぐるまひいて』(1980年)ドナルド・ホール作 バーバラ・クーニ―絵 もきかずこ訳 ほるぷ出版 

いやん、河合隼雄まである。

絶対、この人気が合う!!!!!みたいな(笑)。

 

絵本に限りません。先日は訪問したお宅の書棚に遠藤周作があったことから、ほぼ初対面のママさんといきなり宗教の深いところの話!

沈黙の神から、日本的な宗教観から西欧の宗教観への話へ。

大学の頃はよくこういう話をしていたけれど、普通に公園であったママとは話せない話題だなあ、って。一気に距離が縮まりました!

 

お宅訪問って、気が合わないときは気まずいかもしれないけれど、遠回りせずその人のことに近づけるいいチャンス。

おとなしそうな方が本棚見ると激しめな趣向だったり、意外な発見があって、本当に楽しい!

自分と合う合わないはあっても、どの人もそれぞれに魅力的でツマラナイ人なんていないんだなあ、と毎回思わされます。ただ、魅力発見の糸口が見つからないだけなんだな。

 

勇気を出して、お宅訪問、おススメです。

 

戦争ものが大の苦手な私がおススメする、戦争文学5選

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平和な日々が続きますように

 

前回、『アーニャはきっと来る』という映画の感想のところで、戦争ものが苦手と書いたのですが、それは無力感に苛まれてしまうから。

 

そんな戦争もの苦手な私でも、児童文学では読んでよかったあ、と思うものが多いんです。

 

 

 

■児童文学における戦争文学の特徴

児童文学の良書ってね、「戦争ってこんなおそろしいんですよ!だから、戦争は悪いんです!」とあからさまに反戦をうたっていないんです。極限の状況における人間のありかたを描くこと、そういう状況で人間性はどうなるかを描く。そうすることで、白か黒じゃなくて、自分で考えさせるんですよね。それが、児童文学の特徴。

 

ところが、これが、大人の文学となるとどうもそうでないものが多くなる。より感動的にドラマチックに仕立てるために、憎悪を増幅させたり、善人VS悪人を際立たせたりする。

 

 

でも、前回も書きましたが改めて私はこう思うのです。

描きすぎないことで、「なぜ?」を生み出し、読者が自分の中に‟問い“を持つ力を作者は信じているのではないか、と。

 

さて、そんな戦争ものが苦手な私が、それでも読んでよかった!ぜひ他の人にも読んでもらいたい!と思うものを今日はご紹介。

 

いや、もっともっとあるんですけどね。戦争時代の物語で、戦争について考えさせられても、そこにフォーカスしてないから、戦争文学っていうカテゴリーに入らないなあってものも多いんです。フォーカスしてないのに、考えさせられるっていうのも逆にすごいけど!

 

にしても、もっとほかにもあるでしょー、って思うかもしれません。その通り!周りから評判を聞いていて、まだ読めてないものもあります。コルドンのベルリン3部作とか。絞り切れないのですが、今日の5選はこんな感じにしてみました↓

 

1.『弟の戦争』

blog.goo.ne.jp

2.『走れ、走って逃げろ』

jidobungaku.hatenablog.com

3.『ヒットラーの娘』

blog.goo.ne.jp

4.『ヒットラーのカナリヤ』

jidobungaku.hatenablog.com

 

5.『僕たちの砦』

matushino.wixsite.com

 

しょせん児童文学は浅いね。ん、待って!?

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映画『アーニャはきっと来る』ただいま上映中!

 

※毎週月曜・金曜の19時~21時の間に更新中!

(できるだけ19時ジャスト更新!ムリだったら、21時までに更新笑)

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イギリスを代表するストーリーテラー、マイケル・モーパーゴ原作の『アーニャはきっと来る』の映画を見てきました!

 

有名っていっても、私も児童文学にハマるまで、モーパーゴの名前すら聞いたことなかったんですけどね。

 

原作本が先にあるものの映画化はガッカリさせられることが多いのですが、今回は作者のモーパーゴ自身も満足していたので、見てみました↓

eiga.com

 

これはねえ、もう映像美!

とにかくピレネー山脈の美しさ、時が止まったような村の美しさを見るだけでも大画面で見る価値あり。

 

……だけ?

いやいや、内容ももちろんですね(笑)

 

内容は、羊飼いの少年はじめ、村人たちが一丸となってユダヤ人の人たちをかくまい、山越えでスペインに逃がす手伝いをする話。

 

私、はっきり言うと戦争ものは苦手なのです。

胸がギューッとなってしまい、目をそむけたくなるし、無力感にさいなまれるから。

できれば見たくない、読みたくない。でも、児童文学の名作って“戦争はこんな悲惨なんだ!どうだ!”じゃなくて、優しく問いかけてくれるからそんな私でも素直に読めるし、深く問いかけられるんです。

 

モーパーゴは戦争テーマに書きますが、いつも敵の中にも人間味あふれる人を描いてくれるんですよねえ。敵って、どちらの側から見るかで変わるから、当然どちらにも素晴らしい人はいるわけで。本来なら良き友人になれる人同士を分断させてしまうのが、戦争なんだなということがよく分かります。

 

で、今回の映画。

 

監督いわく、物語のリアリティを高めるために「道路や村々、さらにナチスドイツ軍の軍服や銃もすべて本物です」とこだわった、そう。

 

なのですが……

 

じゃあ、なぜフランス人たちに英語を話させた!?

 

とツッコみをいれずにはいられない(笑)。いや、ここ結構大事だと思うのですが。言葉って、その文化を形成しているから、文化へのリスペクトだと思うんだけどなー。それに加え、もっと描いてほしかったな、と思う場面もあって、正直微妙だなと思うところもありました。他の方のレビュー見てても、“あっさりしすぎてる”という意見も多くて。

 

でもね、思うのです。

ドラマチックに描けば人は感動するかもしれないけれど、それってぐわーっと受身的に受けるだけなんじゃないかな、って。なんとまあ、ドラマチックさを求める意見の多いことよ。

 

確かにそのほうが心揺さぶられるかもしれないけど、“問い”を持つきっかけになるかと聞かれたら違うかも。

 

あの人はどうしてああいう言動をするんだろう?

 

何があの人をそこまでそうさせるんだろう?

 

どういう背景でそこまで勇気を持てるんだろう?

 

この子たちはどうやって生き抜いてきたんだろう?

 

描かれないからこそ、今度は自分で調べてみようという気になる。

 

“しょせん児童文学、浅い”

 

とレビューで書いてる人がいたけれど、それは違うんじゃないかな、って。

児童文学があっさりしているのは、子どもたちが自分で“問い”を持つ力を信じてるからなんじゃないのかなあ。想像の余地を残してる。

 

また、この映画はユダヤ人迫害にありがちな残虐な場面はほとんど出てこないので、子どもを怖がらせずに一緒に見ることができます。

敵の中にもいい人はいる、結局は個人個人の人間性、ということも伝えてくれる。

 

でもね、だからこそ逆に厳しいとも言えます。

だって、言い訳がきかないんだから。あの場、あの状況ではああする(敵対)しかなかった、って言えないんだから。

どんな状況でも、人間としての尊厳を失わずに、自分ならいられるか。

自分の命がかかってでも見知らぬ人をかばえるか。

それを問われるんです。問い詰められることなく、自発的に。

 

この映画を見て物足りなかったところ、それは自分で調べてみようという宿題と私は受け取りました!

 

余談ですが、久々に見たジャン・レノ、いい味出してました!お腹もずいぶんと出てたけど(笑)。『LEON』好きだったなあ。

 

原作はまだ読んでないのですが、こちらです!↓

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『アーニャは、きっと来る』(2020年)マイケル・モーパーゴ作 佐藤見果夢訳  評論社


 

 

 

物語の中の食べ物って最強!

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『おいしいおはなし 子どもの物語とレシピの本』(2019年)本とごちそう研究所 グラフィック社

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(19時更新だったのですが、遅れることが多いので笑)

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今日の一冊はこちら!

私の周りで、軒並みみなさんがおうちに連れ帰っている子です。

 

子どもの頃本を読む楽しみって、ほんとーーーーーにいかに美味しい食べ物が出てるかがポイントでした(笑)。私は海外の物語が好きだったので、聞いたこともない食べ物の響きにワクワクしたり、異国情緒をそこから感じ取ったり。食べ物の力って偉大!

内容はたいして思い出せなくても、なんか美味しそうなものが出てきてワクワクしたな、という感覚だけが残ってる物語もたくさんあります。

 

さて、こちらのレシピ本は、春夏秋冬のレシピに分かれていて、40冊の文学が紹介されています。それがねえ、よくあるものはもちろん、「へえ、これも入れるんだ!」というものまで。

 

日本のものだと、まず『窓ぎわのトットちゃん』から始まるんですよ。

海のものと山のもの入りのお弁当、憧れた、憧れた!!!

 

精霊の守り人』もあれば『太陽の子』や『二十四の瞳』まである。『チョコレート戦争』のエクレアは、子どもの頃それはもう憧れ中の憧れだったなあ。

 

個人的に嬉しかったのは、『続・あじながおじさん』があったこと。”続”が好きなんです!好きすぎて原書買ったくらい。

 

ああ、どれから作ろうかなあ。

 

とはいえ、中には「あれ?想像してたのと違う」というものも。

そのくらい小さい頃からの妄想ふくれあがってますから。

そんなとき、やっぱりいつか自分でも物語レシピ本出したいなあ、なんて思うのでした。

 

クリスマスプレゼントにもおススメです♪

人にも自分にも贈りたくなる本7選

クリスマスが近づいてきましたね!

某媒体で、人にも自分にも贈りたくなる本7選をご紹介したので、こちらのブログでもご紹介。

 

ポイントは、中身はもちろんのこと、装丁も素敵で持ってるだけで、中身読まなくてもワクワクできること。積ん読(つんどく)でも、罪悪感覚えないもの(笑)。いや、中身も素晴らしいので、読んでほしいですけどね。

 

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①『イワンの馬鹿』(2020年)レフ・トルストイ著 小宮由訳 アノニマ・スタジオ

 今年のイチオシはこちらです!

小宮由さんの訳というだけで、もうもう信頼感抜群なのですが、『イワンの馬鹿』ってこんなに深かったんだ!と愕然。

平和とは、本質的な幸せとは、自らの生き方を問い直させられることになろうとは。

こちらの感想については、また後日別途詳しく書こうかと思います。

 

 

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②『預言者』(1990年)カリール・ジブラン著 佐久間彪訳 至光社

こちらは、先日このブログでもご紹介したもの↓

jidobungaku.hatenablog.com

 

 

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③『新装版 ムーミン谷の冬』(2011年)トーベ・ヤンソン著 山室静訳 講談社

今年はムーミン75周年ということで、ぜひともこの新装版を推したい。

表紙並べて眺めているだけでうっとりなんですよねえ。文庫版だったら、全巻そろえても大した値段じゃないので、ぜひ大人買いしてください(笑)。

jidobungaku.hatenablog.com

 

 

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④『妖精の手引書』(2018年)キャロリン・タ―ジョン著 柴田里芽訳 グラフィック社

 オールカラーで分厚い立派な表紙も特別感があるんですよねえ。写真やイラストも豪華で美しさに目を見張るんです。神話、伝説、おとぎ話からクラフトやスイーツレシピにいたるまで、美しいビジュアルで紹介する妖精ガイドブック。別世界に連れて行ってくれますよ。

 

 

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⑤『ノーム 不思議な小人たち』(2017年)ヴィル・ヒュゲイン他共著 遠藤周作他共訳 グラフィック社

これはもうねえ!大大大好きな大切な一冊です。

子どもの頃から、何度めくってきたことか。自然の中で生きる知恵がもりだくさん。オールカラー、総ルビなんおで幅広い年齢層の方が楽しめる作りになってます。

 

 

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⑥『モーションシルエット』(2015年)シルエットブックス著 グラフィック社

 飛び出ししかけ部分に光を当てて、影の動きを楽しむ絵本です、「世界で最も美しい本コンクール」銅賞を受賞したそう!これって、電子書籍では決して体験できない分野ですよねえ。アイディアもすごいし、プレゼントだとなお嬉しい一冊。

 

 

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⑦『魔法使いたちの料理帳』(2019年)オーレリア・ポーポミエ著 田中裕子訳 原書房

こちらも以前このブログでかなり推したもの(笑)。いやあ、本当に写真がきれいなんです!読んで楽しい見て楽しい、作って楽しい(←まだ作っていませんが笑)。

表紙こそおどろおどろしいものの、中身の写真の美しさは秀逸なんです。物語によって文体を変えるなどの工夫もよくて。第二弾も出たので楽しみ!↓

 

 

 

もっともっとおススメはあるのですが、本日は7選ということでこちらにて!

 

 

 

2巻からが面白い!

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『サリーのえらぶ道』(2011年)エリザベス・オハラ作 もりうちすみこ訳 さえら書房

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シリーズものって、1巻紹介したら2巻目以降はわざわざ紹介する必要ない気もする(需要がない?)のですが、1巻で止めてほしくないので、ご紹介(笑)。以前ご紹介したコチラの続きです↓

jidobungaku.hatenablog.com

 

成長物語って、2巻、3巻と巻を重ねるごとに面白くなっていくんですよねえ!

 

赤毛のアン』も個人的にはそうでした。2巻目以降が好き。夢見心地な少女時代はくすぐったさもあるけれど、だんだんとたくましく成長していくさまが、たまらなく興味深いんです。ちなみに、一番好きなのはアンシリーズらしくないともいえる『アンの娘リラ』だったなあ。

 

正直いうと、このサリーシリーズの1巻は、面白かったけれど、どこか既視感もあり。

でも、2巻目以降はアイルランドや時代の特色が出てきて、ぐんと面白くなってきたんです。だから、1巻でやめちゃったら、読まないのはモッタイナイ!

 

2巻では、田舎暮らしを理想化する文芸復興運動をしている都会人が、ホームステイにやってきます。客観的に見ると、微妙に色々とズレてるところが興味深い。報道カメラマンの見せたい構図に疑問を持たせられたり。

 

他の国の政治的なことなんて、全然興味持てなかったのに、大人になって、物語として読むと興味深いこと!

物語の力すごいなあ。そこにその時代に生きている人たちの顔が見えてくる。

 

田舎は牧歌的でモノはなくても幸せで……なんて思いがちだけれど、ここにも貧困は弱者を追い詰める。そんな中でも、母親の子どもへの限りない愛情には感動してしまう。ああ、この物語大好き。

 

 

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『サリーの愛する人』(2012年)エリザベス・オハラ作 もりうちすみこ訳 さえら書房

3巻では、舞台は都会(首都ダブリン)へと移ります。

サリーは家庭教師として雇われていることもあって、他のお手伝いさんとは別格扱い。

文芸復興の熱気。進歩的で刺激的な新しい上流階級の友人たち。揺れ動く恋心。

都会もいいなあ、って思います。

 

そんな中で、選択をせまられていくサリー。

ラストの選択は個人的には意外だったけれど、人生は選択の連続だから。

 

違う時代、違う文化なのに感情移入できることで、ちょっと世界が広がる。

文章は平易なので、小学校高学年からおススメですが、大人が読むと歴史的にも面白いので。2巻、3巻もぜひ!

 

 

 

 

 

たまには刺激の強さから離れよう

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『カルペパー一家のおはなし』(2016年)マリオン・アピントン著 ルイス・スロボドキン絵 清水真砂子訳 瑞雲舎

※毎週月曜・金曜のだいたい19時更新中!

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今日の一冊は、ほっこり心あたたまる低学年向けの物語。

清水真砂子さんの訳で、絵がルイス・スロボドキンときたら、そりゃ外れないでしょ、と児童文学好きな人なら思うかもしれません。ええ、そうでした!

 

最近の子たちは、展開の早いものや刺激の強いものに慣れているので、こういう地味な物語はどうなんだろうな。でも、こういうのこそ手渡したいな。

 

例えていうなら、コンソメスープみたいなんです。

派手な具材がたっぷり入ってるわけじゃないけれど、寒い日に飲むとじんわりじんわり身体がポカポカしてくるような、そんな物語。

刺激の強いものだけじゃ、胃が疲れちゃうから、そんなときに飲みたいスープみたい。

 

翻訳されたのは2016年ですが、は1963年に書かれているので、古き良き時代の素朴さがあるんですよねえ。

 

カルペパー一家は切り紙人形の一家。

人間が見ていないときに動きだす。こういう世界、知ってる子は強いんですよね。

 

何に強いって?

 

孤独になったとき。

ツラい思いをしたとき。

人間関係だけが世界じゃない、って知ってる子は、カルペパー一家のことなんかを想像できる。すると、ふっと気持ちが軽くなるんですよね。

 

だから、手渡したい。

 

クスッと笑えたり、人間から見たら大したことじゃなくても、切り紙の彼らにとっては大冒険だったり。

何よりも、互いを思い合う優しい気持ちにほっこりします。

 

この世でなによりも大事なものはなんなのか。

ほっこりした物語の中でさりげなく教えてくれるのもまたいいんだなあ。

 

寒くなってきた季節に、ポカポカ温まる物語をどうぞ。