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今日の一冊は、図書館に春の本特集コーナーがあり、そこで手に取った一冊。
『夏の庭 The Friends』で有名な、湯本香樹実さんの春の一冊ですが、“ぽかぽかあたたか”という春のイメージだと思って手に取ると裏切られます。思春期にさしかかる狭間の期間の何とも言えない閉塞感が描かれている物語でした。
中学受験に落ちてしまった主人公のトモミは、学校の友だちと遊ぶこともやめ、卒業式では倒れてしまい、色々うまくいかないまま卒業後の春休みへ。家族は近隣トラブルでバラバラ。弟のテツとプチ家出をしたり、野良猫たちに餌をやる不思議なおばさんと仲良くなったり......。
うーん。個人的には読んでいて、とても息苦しかったです。
特に、弟と一緒にいながらも通りすがりに痴漢にあってしまうところなどは、もうやめて!と叫びたくなりました。
なんで、こんなに息苦しく感じるんだろう。
境問題の近隣トラブルとか、ここで折れたらこちらが損という気持ちも分かるし(だって、そもそもは自分ちの土地で正当な権利なのだから)、けれどそれに捉われすぎるあまりに離れたくなる、逃げたくなるお父さんの気持ちも分かる。私は昔から、いわゆる区画整理された住宅街や団地、マンション群というのが苦手で。人間関係しか入りこむ余地のない空間に、息苦しさを覚えてしまうのです。
そんな感想をまず持ったのですが、驚いたのは、この主人公の心の揺れ動きにとても共感する人が多かったこと。そっか、共感できない私の方が少数派なんだ。
でも、共感できないものを知ることも大事よね、って思っていたら、ちょうど読んでいた別の本にもそのようなことが書かれていたんです。
そちらは映像作品に関することでしたが、作品の良し悪し判断基準が「登場人物に共感できるか」によりすぎているのが、昨今の傾向だ、って。そして、そこばかり強化されていくと、それは他者への想像力の欠如へとつながってしまう......と。同感!気をつけよう。
この物語を読んで、自分の気持ちを代弁してくれた!と救われる子もいることでしょう。
ところで、こちらの物語のもう一つのテーマとして「死」があります。祖母が亡くなるとき、思わずもう終わりを願ってしまった、そんな自分に罪悪感を覚え、自分が怪物になる夢をたびたび見てしまう主人公のトモミ。まさに同じようなシチュエーションで、私が好きだったコチラもご紹介させてください。↓
読み終えての感想は、ああ人は誰しも自分の感情に向き合うことをしなければ、生きづらくなるんだな、っていうことでした。感情に良いも悪いもなくて、ただ見つめてあげることが大事なんだな。自分の真実の感情を認めることが、いかに大切なことか。
こちらの主人公も、トモミと似たような年代。13歳の少年コナー。もうね、不幸のデパートみたいな人生で、なんでこんな小さな子がこんなにいっぱい背負わなくちゃいけないのー!?って感じなんです。
両親の離婚、祖母との確執、重病の母と介護、学校でのイジメ、孤独、それに加えて、毎晩悪夢にうなされて、ついには幻覚!?モンスターまで呼び寄せちゃう。うわああ、これは、叫びたくなっちゃいます。ダークです。それでも、読めるのはファンタジーだからかも。
コナーの真実とは?怪物に追い詰められても追い詰められても、本当にギリギリになるまで話せなかった真実。人によっては、なあんだということかも。理解できないくらい、些細なことかも。でも、分かる人には分かる。自分が死にたくなるくらい隠したい秘密、認めたくない感情だってことを。
また、この物語には、人というのはもっと複雑で、善なるものも悪なるものも同居できるし、もっといえば善も悪も本当はナイということも描かれています。それを怪物が語る寓話的な三つの物語が分かりやすく教えてくれるんです。人間には色んな面があるということ、矛盾を抱えて存在しているということを。
なぜ自分の真実の感情に向き合うことが大事なのか、フタをしてはいけないのか。
ファンタジーを通して教えてくれるこちらの物語も(むしろ、こちらを)ぜひ!